内定の連絡のあと、内定承諾書と一緒に「労働条件通知書」や「雇用契約書」が届き、練習や遠征の合間にどこを見ればいいのか分からない、という場面があります。
厚生労働省がモデル様式を公開しているので、手元の通知書と見比べながら上から順に12項目を読むと、欄を見つけやすくなります。説明会などで聞いた内容と違う点、書かれていない点は、承諾前に採用担当者へ確認します。本記事は編集部が厚生労働省の資料をもとに作ったチェックリストで、条件の良し悪しや法的な判断はしません。確認日は2026年10月22日です。
内定承諾書と労働条件通知書は役割が違う
労働条件の中身が書かれるのは労働条件通知書(または雇用契約書)で、内定承諾書は、一般には入社の意思を企業に伝えるために提出する書類です。そのため、承諾書にサインする前に通知書の条件を確認しておくと、聞いていた内容との違いに気づく機会をつくれます。
| 書類 |
誰から誰へ |
主な役割 |
根拠 |
| 内定通知書 |
企業から学生へ |
内定の連絡 |
企業ごとの書式 |
| 内定承諾書 |
学生から企業へ |
入社の意思表示 |
企業ごとに用意されるのが一般的です |
| 労働条件通知書 |
企業から学生へ |
労働条件の明示 |
労働基準法第15条 |
| 雇用契約書 |
双方が署名 |
契約内容の合意 |
通知書を兼ねる形もあります |
新卒には特有の点もあります。厚生労働省の「新規学校卒業者の採用に関する指針」は、採用内定を行う場合、内定者に文書で採用の時期、採用条件及び採用内定期間中の権利義務関係を明確にする観点から取消し事由等を明示するものとし、採用内定は一般には例年の入社時期を就労の始期とする労働契約が成立したと認められる場合が多いことに留意するよう事業主に求めています(岐阜労働局「新規学校卒業者の採用に関する指針」)。編集部としては、だからこそ内定の段階で条件を確かめる意味があると考えます。
京都新卒応援ハローワークは、承諾書を提出した後の辞退について法的な考え方を説明したうえで、辞退する場合は早急に連絡するよう求めています。詳しくは原典をご覧ください(京都新卒応援ハローワーク「内定後のこと」)。承諾の判断そのものは、内定承諾は部活引退の前後どちらがいいかで扱っています。
通知書はいつ・どんな形で届くか
交付の時期は企業によって異なります。書面のほか、本人が希望した場合はメールなど、出力して書面にできるものでも明示できるとされています。
厚生労働省のモデル労働条件通知書の記載要領には、労働者が希望する場合にはファクシミリや電子メールなど(出力して書面を作成できるものに限る)によっても明示できる、とあります(モデル労働条件通知書)。モデル様式には「労使間の紛争の未然防止のため、保存しておくことをお勧めします」との注記があるので、PDFで届いた場合も保存しておきます。
承諾の期限までに届いていない場合は、「承諾前に労働条件を書面で確認したいので、通知書(または条件をまとめた書面)をいただけますか」と頼む方法があります。届かないことが法的にどうかは、本記事では判断しません。
厚生労働省のQ&Aでは、2024年4月からの新しい明示ルールは、2024年4月1日以降に締結される労働契約に適用されるとされています(労働条件明示等に関するQ&A)。後述の「変更の範囲」の欄があるかを確かめてください。
労働条件通知書の見方|上から順に確認する12項目
モデル様式の欄の順に、契約期間、就業の場所、業務、時間、休日・休暇、賃金、退職、その他の12項目を確認します。次のチェックリストを手元の通知書と並べて使ってください。
以下、4つのまとまりに分けて、読み方と、競技を続ける人が照らし合わせる観点を紹介します。観点は一例です。
1〜3:契約期間と、就業の場所・業務の「変更の範囲」
2024年4月から、全ての労働契約の締結時に、「雇入れ直後」の就業場所・業務に加えて「変更の範囲」の明示が必要になりました(厚生労働省リーフレット)。変更の範囲とは、将来の配置転換などによって変わり得る範囲のことで、Q&Aでは「当該労働契約の期間中における変更の範囲」とされています。
変更の範囲は、将来の配置転換などによって変わり得る範囲を示す欄です。実際の配属の決まり方は、採用担当者に確認する方法があります。競技を続けたい人は、就業の場所の欄で、練習拠点に通える範囲かどうかを見る観点があります。契約期間に定めがある場合は、更新の有無や判断基準、更新上限も見ます。用語の詳しい意味は新卒の募集要項 用語集をご覧ください。
4〜6:時刻・制度・残業の有無
モデル様式の時刻の欄は、(1)始業・終業の時刻、(2)変形労働時間制等(交替制を含む)、(3)フレックスタイム制、(4)事業場外みなし労働時間制、(5)裁量労働制のうち、該当するもの一つに○を付ける形です。フレックスタイム制ならコアタイムなどの時間帯、交替制ならシフトごとの始業・終業の時刻を書くこととされています(記載要領6)。
社会人でも練習や指導を続けたい場合は、終業時刻やコアタイムと練習の開始時刻を並べて見る観点があります。所定時間外労働は様式上「有・無」で示されるため、月の目安の時間が書面になければ、質問して確かめる方法があります。
7〜8:休日と休暇
休日は、曜日などを特定して書くことになっています(記載要領7)。年次有給休暇は6か月継続勤務し出勤率が8割以上の場合に与えられるもので、通知書に日数が書かれます(記載要領8)。「継続勤務6か月以内の年次有給休暇(有・無)」の欄もあります。
入社直後に大会や遠征で休みが要りそうな人は、この欄と「その他の休暇」の有給・無給を見て、足りなければ質問します。
9〜12:賃金・退職・その他
基本賃金等は具体的な額を書くのが原則ですが、就業規則に規定された賃金等級により額が決まる場合は、その等級を示すことで足りるとされています(記載要領10)。固定残業代がある場合は、何時間分の手当としていくらなのかが読み取れるかを確認します。表示の見方は用語集記事で扱っています。
賃金の締切日と支払日は、初任給がいつ入るかに関わります(新卒1年目の手取りカレンダー)。割増賃金率の欄は、モデル様式では「法定超 月60時間以内」「月60時間超」「休日」「深夜」に分かれています。
退職の欄には、定年、自己都合退職の届出日数、解雇の事由が書かれます。その他の欄では、社会保険・雇用保険の加入、相談窓口、「就業規則を確認できる場所や方法」を見ます。
書いてあること・ないことの見分け方
モデル様式の記載要領3では、書面の交付等で明示することが労働基準法で義務付けられている事項と、制度がある場合に明示する事項が区別されています。後者には、退職金、賞与など臨時に支払われる賃金等、労働者に負担させるもの、安全衛生、職業訓練、災害補償・業務外の傷病扶助、表彰・制裁、休職が挙げられ、制度として設けている場合には口頭または書面等で明示する義務があるとされています。書いていないからといって制度がないとは限らないため、気になる項目は質問します。
通知書だけでは分からないことがある項目
入社日、配属先の決まり方、試用期間、研修中の扱いなどは、通知書の欄に詳しく書かれない場合があります。そうした項目は、別の書類や質問で確かめます。
モデル様式の末尾には「以上のほかは、当社就業規則による」とあります。「就業規則を確認できる場所」の欄が手がかりになります。
配属については1社の例ですが、大阪大学男子ラクロス部出身でコンサルティング業界に進んだOBは、研修中の課題やグループワークに一つひとつ目的を持って取り組んだ結果、枠の限られた部署への配属につながったと話しています(ツナカレメディアのOB・OG取材記事、2026年6月25日公開)。研修を経て配属が決まる会社では、通知書だけでは最終的な配属先が分からないこともあります。
また、IT企業の株式会社SPIN TECHNOLOGYの人事部部長は「入社前のギャップを徹底的になくすため、厳しさも含めてすべて事前に伝えるようにしています」と話しています(ツナカレメディア「人事の声」2026年1月27日公開)。入社前の情報提供を重視している企業もあり、条件について質問すること自体が失礼に当たるとは限りません。
| 項目 |
通知書のどこを見るか |
書かれていなければ確認する先 |
| 入社日 |
契約期間の開始日など |
採用担当者 |
| 試用期間 |
通知書や就業規則 |
採用担当者 |
| 配属の決まり方 |
就業の場所・業務の欄(範囲は分かるが、決まり方は書かれない場合があります) |
採用担当者 |
| 研修期間中の勤務地 |
就業の場所の欄 |
採用担当者 |
| 社会人で競技を続ける場合の扱い |
通知書の欄にない場合があります |
採用担当者(会社ごとに異なります) |
募集要項と違う・分からないときの確認の仕方
違いや不明点は、承諾の返事をする前に、項目を絞ってメールで採用担当者に確認する方法があります。
ハローワーク浦和の資料は、通知書の賃金・労働時間・休日・就業場所等が求人票と相違がないか確認することが大切だとし、例として、求人票では年間休日数が125日だったのに通知書では115日だったケースや、求人票にはなかった固定残業代が通知書では給与に含まれていたケースを挙げています(ハローワーク浦和「労働条件の最終チェック」)。
照合するときは、募集要項、説明会のメモ、通知書を「項目・募集要項・通知書・違い」の4列に並べると、見落としにくくなります。違いが見つかったら、質問は2〜3点に絞ってメールで送ります。文例は次のとおりです。
件名:労働条件通知書の内容についてのご確認(○○大学 氏名)
○○株式会社 採用ご担当者様
○○大学の(氏名)です。内定のご連絡と労働条件通知書をありがとうございました。拝受いたしました。
承諾のお返事の前に、2点確認させてください。
①就業の場所の変更の範囲に「全国の支社」とありますが、新卒の方の初任配属はどのように決まることが多いでしょうか。
②所定時間外労働が「有」となっておりますが、配属部署での月の目安を伺えますでしょうか。
あわせて、承諾書の提出期限を改めて確認させてください。ご教示のほどよろしくお願いいたします。
(氏名)
労働基準法第15条第2項には、明示された労働条件が事実と相違する場合の労働契約の解除についての定めがあります(群馬労働局「採用・契約に関する事項のあらまし」)。個別の事案への当てはめは、本記事では扱いません。
一人で判断しにくいときは、大学のキャリアセンターや新卒応援ハローワークに相談できます。労働条件の明示や労働契約に関する相談先として、厚生労働省のリーフレットでは都道府県労働局と労働基準監督署が案内されています。承諾期限の延長をお願いする連絡は、複数内定を保留するときのマナーで扱っています。
まとめ
承諾書にサインする前に、通知書の条件を確かめましょう。モデル様式の欄の順に12項目を上から読む方法があります。「変更の範囲」と休暇の欄は、練習や大会の予定と照らして見る観点があります。違う点や書かれていない点は、質問を2〜3点に絞ってメールで確認します。
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