説明会の合間や練習後に募集要項を開くと、「変更の範囲」「固定残業代」「試用期間あり(3か月)」といった見慣れない言葉が並んでいることがあります。
結論から言うと、募集要項の用語は、法律で企業に書くことが求められている項目(【法令】)と、法律上の定義がなく慣用で使われる語(【慣用】)に分かれます。【法令】の項目は、内定後の労働条件通知書でも確かめられます。本記事は、編集部が法令と厚生労働省の資料で区別を付けた用語集です。
この用語集の作り方と【法令】【慣用】の見方
法令や厚生労働省の資料で記載義務・定義を確かめられた語を【法令】、確かめられなかった語を【慣用】と表示し、慣用語は「一般的には」の意味として紹介します。対象は新卒の募集要項・求人票と労働条件通知書の語です。内々定・オワハラなど就活日程の語は就活スケジュール用語集をご覧ください。
確認日は2026年10月17日です。主な資料は厚労省の求職者向けリーフレット、労働基準法、若者雇用促進法施行規則です。
募集要項の用語は2段階で明示される(募集時と契約時)
労働条件は、募集の段階では職業安定法に基づいて募集要項・求人票に、労働契約を結ぶ段階では労働基準法第15条に基づいて労働条件通知書などで、企業から明示される仕組みです。
| 段階 |
根拠 |
書面の例 |
明示のタイミング |
| 募集時 |
職業安定法 |
募集要項・求人票 |
原則、面接など最初に接触する時点までに全ての労働条件 |
| 契約時 |
労働基準法第15条 |
労働条件通知書など |
労働契約の締結に際して |
リーフレットによると、広告のスペースが足りないなどやむを得ない場合は「詳細は面談時にお伝えします」などと付けて一部を別に明示することもできますが、その場合も原則として最初に接触する時点までに全て明示されることになっています。面接等で条件が変わる場合、企業は変更内容を明示する必要があります。なお、労働基準法第15条第2項には、明示された労働条件が事実と相違する場合の労働契約の解除についての定めがあります(個別の事案にどう当てはまるかは、本記事では扱いません)。
募集要項に書かれる項目の用語【法令】
リーフレットは、最低限明示しなければならない労働条件として、業務内容・契約期間・試用期間・就業場所・就業時間・休憩時間・休日・時間外労働・賃金・加入保険・受動喫煙防止措置・募集者の氏名または名称を挙げています。
| 用語【法令】 |
記載例(リーフレット) |
確認のポイント |
| 業務内容 |
「(雇入れ直後)一般事務(変更の範囲)●●事務」 |
入社直後とその後の両方 |
| 契約期間 |
「期間の定めあり」など |
期間の定めの有無 |
| 試用期間 |
「試用期間あり(3か月)」 |
期間と期間中の賃金 |
| 就業場所 |
「(雇入れ直後)東京本社(変更の範囲)●●支社」 |
変更の範囲の広さ |
| 就業時間・休憩時間 |
「9:30~18:30」「12:00~13:00」 |
練習時間と重なるか |
| 休日 |
「土日、祝日(年末年始を含む)」 |
曜日の記載 |
| 時間外労働 |
「あり(月平均20時間)」 |
有無と目安の時間 |
| 賃金 |
「月給25万円(ただし、試用期間中は月給20万円)」 |
試用期間中の額 |
| 加入保険 |
「雇用保険、労災保険、厚生年金、健康保険」 |
4つの保険の記載 |
このほか受動喫煙防止措置(例「屋内禁煙」)も明示事項です。裁量労働制を採る場合は「企画業務型裁量労働制により、●時間働いたものとみなされます」のような記載が必要とされています。労働基準法第32条は、休憩時間を除き1週40時間・1日8時間を超えて労働させてはならないと定めています(法定労働時間)。
試用期間【法令】と本採用
試用期間は募集時に明示が必要な項目で、期間中は賃金が異なる場合があります。リーフレットの記載例でも「ただし、試用期間中は月給20万円」と別に書かれています。労働基準法第21条は、試の使用期間中の者には解雇予告の規定(第20条)を適用しないとしつつ、14日を超えて引き続き使用されるに至った場合はこの限りでないとしています。解雇の可否は個別の事情によって異なり、本記事では扱いません。「本採用」は【慣用】で、一般的には試用期間が終わった後の状態を指します。
2024年4月に加わった「変更の範囲」の読み方
「変更の範囲」は、雇入れ直後にとどまらず将来の配置転換など今後の見込みも含めた、労働契約の期間中に変わり得る業務・就業場所の範囲のことで、2024年4月1日から募集時にも契約時にも明示が必要になりました。
募集時には、職業安定法施行規則の改正で、業務の変更の範囲、就業場所の変更の範囲、有期労働契約を更新する場合の基準(通算契約期間または更新回数の上限を含む)の3事項が加わりました(厚労省)。契約時も、労働基準法施行規則第5条の改正で、全ての労働契約の締結時に変更の範囲の明示が必要です(厚労省)。
次はリーフレットの記載例です。右列は、記載から読み取れる範囲を編集部が言い換えたものです。
| 雇入れ直後 |
変更の範囲(記載例) |
読み取れること |
| 法人営業 |
製造業務を除く当社業務全般 |
営業以外の業務に就く見込みもあり得る。製造業務は範囲外 |
| 経理 |
法務の業務 |
変わり得る業務が法務に限られている |
| 大阪支社 |
本社および全国の支社、営業所 |
全国の拠点が将来の配置の範囲に入っている |
| 渋谷営業所 |
都内23区内の営業所 |
勤務地の範囲が都内23区内に絞られている |
範囲に含まれていることは、その配置が決まっていることを意味するわけではありません。実際の配置の考え方は、説明会や面接で確認できます。
「雇入れ直後」と「その後」が違う例(取材記事より)
- 製造業向け人材サービスのフジアルテ株式会社の人材開発部 社員採用チームのリーダーは、「新卒で入社後は、約2か月間現場のオペレーターとしてメーカーやスタッフに最も近い場所で経験を積みます。」と話し、その後は営業や採用などに配属される流れだと紹介されています(「人事の声」2026年4月7日公開)。
- 宿泊・不動産の株式会社UBIQSのHR事業部は、「まずは座学の研修を行い、その後は、2〜3週間ずつ3部署をローテーションして、仕事の流れを体感してもらいます。その後希望の部署を提出し、本配属となります。」と話しています(「人事の声」2025年12月4日公開)。
この2件は取材での説明であり、両社の募集要項の記載内容を示すものではありません。入社直後とその後で業務が異なる場合があるため、業務内容欄は雇入れ直後と変更の範囲の両方を読むと、入社後を想像しやすくなる場合があります。
部の活動を社会人でも続けたい人の確認ポイント
競技や指導などの活動を続けたい人は、「就業場所の変更の範囲」「休日」「就業時間」が練習場所や時間と重なるかを見ておくと、比べやすくなる場合があります。範囲が広ければ、説明会で「変更の範囲に全国の支社とありますが、新卒の方の配属先はどのように決まることが多いでしょうか」と質問できます。
賃金欄の用語(基本給・手当・固定残業代)
固定残業代がある場合、リーフレットは、①固定残業代を除いた基本給の額、②何時間分の時間外手当としていくら支給するか、③その時間を超える時間外労働分の割増賃金を追加で支給すること、の3点を書く記載例を示しています。
(1) 基本給 ●●円((2)の手当を除く額)
(2) ■■手当(時間外労働の有無に関わらず、●時間分の時間外手当として▲▲円を支給)
(3) ×時間を超える時間外労働分についての割増賃金は追加で支給
(出典: 厚生労働省 求職者向けリーフレットの記載例)
- 賃金形態【法令・指針】: 月給・日給・時給などの区分です。
- 基本給・定額的に支払われる手当・通勤手当・昇給に関する事項【法令・指針】: 青少年雇用指針が賃金について明示を求める事項です(指針)。
- 固定残業代【法令・指針】: 同指針は、名称にかかわらず、固定残業時間と金額、固定残業代を除いた基本給の額、超過分の割増賃金を追加で支払うことなどの明示を求めています。「みなし残業代」は【慣用】の呼び方です。
- 初任給【慣用】: 法令上の定義語ではなく、一般的には入社後最初に払われる月の賃金です。統計の所定内給与額とは範囲が異なる場合があります(中央値と分布)。
2社を比べるときは、月給の総額だけでなく①の基本給の額と②の時間数をそろえて見ると比べやすくなる場合があります。
休日欄の用語(完全週休2日制・週休2日制・年間休日)
「完全週休2日制」は毎週2日の休みがある制度で、「週休2日制」だけでは毎週2日休めるとは限りません。
| 用語 |
タグ |
意味 |
| 完全週休2日制 |
【慣用】 |
毎週2日の休みがある制度 |
| 週休2日制 |
【慣用】 |
就労条件総合調査では、月3回・隔週・月2回・月1回の週休2日制も含まれる |
| 年間休日 |
【慣用】 |
1年間の休日の合計日数 |
| 法定休日 |
【法令】 |
労働基準法第35条で、毎週少なくとも1回(4週間を通じ4日以上の休日を与える場合を除く) |
| 年次有給休暇 |
【法令】 |
労働基準法第39条で、雇入れの日から6か月継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に10労働日 |
令和7年就労条件総合調査では、「何らかの週休2日制」の企業割合は92.6%、「完全週休2日制」は65.5%、令和6年1年間の年間休日総数の1企業平均は112.4日でした。業界別は完全週休二日制の業界別データをご覧ください。入社後すぐの大会や遠征で休みが必要になりそうな人は、年次有給休暇の付与が6か月後である点を踏まえ、特別休暇など会社の制度(会社ごとに異なります)を説明会で確認しておくと予定を立てやすくなる場合があります。
青少年雇用情報とユースエール(若者雇用促進法)
新卒者等の募集を行う企業は、企業規模を問わず、応募者等から求めがあった場合に、3つの類型ごとに1つ以上の職場情報(青少年雇用情報)を提供することが義務とされています(厚労省)。
| 3類型 |
施行規則第3条の項目(主なもの) |
| (ア)募集・採用に関する状況 |
直近3事業年度の採用数と離職者数/平均継続勤務年数 |
| (イ)職業能力の開発・向上に関する状況 |
研修/自己啓発支援/メンター制度/キャリアコンサルティング/社内検定等 |
| (ウ)企業における職場定着に関する状況 |
月平均所定外労働時間/有給休暇の平均取得日数 |
このほか育児休業の取得状況などの項目もあります。(ウ)は別の厚労省資料では「雇用管理に関する状況」と表記されています。
青少年雇用情報を求めるときの問い合わせ文
施行規則第4条では、求める際に①氏名、②住所またはメールアドレス、③学校名と在学年、④提供を希望する旨を企業に明示することとされています。企業は3類型それぞれ1つ以上を、メールや書面などで提供することとされています。採用ページや就職サイトに既に掲載されていれば、まずそこを確認します。4点を入れたメールの例です。
件名: 青少年雇用情報のご提供のお願い(○○大学 ○年 氏名)
株式会社○○ 採用ご担当者様
○○大学○○学部○年の(氏名)と申します。貴社の新卒採用への応募を検討しております。
つきましては、若者雇用促進法に基づく青少年雇用情報のご提供をお願いできますでしょうか。
ご多用のところ恐れ入りますが、よろしくお願いいたします。
(氏名)/○○大学○○学部○年/メールアドレス: ○○○@○○
送る前に、施行規則第4条の4点(氏名、住所またはメールアドレス、学校名と在学年、提供を希望する旨)が入っているかを見直します。
ユースエール認定
若者の採用・育成に積極的で、残業時間が少ない、離職率が低いなど若者の雇用管理の状況が優良な中小企業を、厚生労働大臣が認定する制度です。認定企業は「若者雇用促進総合サイト」で検索できます(厚労省)。
労働条件通知書を受け取ったら募集要項と照合する
労働条件通知書を受け取ったら、募集要項で読んだ【法令】の項目と同じ欄を並べて照合すると、条件の違いに気づきやすくなります。
| 照合する欄 |
違いがあれば確認すること |
| 業務内容・就業場所(雇入れ直後・変更の範囲) |
範囲が変わった理由、配属先の決まり方 |
| 試用期間(有無・期間・期間中の賃金) |
期間中の賃金の額 |
| 就業時間・休憩・休日 |
曜日・時間の違い |
| 賃金(基本給・固定残業代の時間数と金額) |
内訳の違い |
| 時間外労働の有無 |
目安の時間 |
労働契約の締結時にも、2024年4月から就業場所・業務の変更の範囲の明示が必要になっているため、通知書でもこの2欄を確認できます。
厚労省はモデル労働条件通知書を公開しています。違いがあれば、まず採用担当者に確認します。確かめた条件は企業ごとにまとめると比較しやすくなります(企業研究ノートの作り方)。
この用語集で判断できないこと
個別企業の条件の良し悪しや、個別のトラブルが法律上どう扱われるかは、この用語集では判断できません。ハローワークの求人が実際と違っていた場合は「ハローワーク求人ホットライン」に申し出ることができます。労働条件の相談は、都道府県労働局・労働基準監督署・大学のキャリアセンターも窓口になります。
まとめ
募集要項の用語は【法令】の語と【慣用】の語に分かれます。2024年4月から「変更の範囲」の明示が必要になりました。固定残業代は3点を確認し、青少年雇用情報は求めがあれば提供が義務とされています。内定後は、通知書と募集要項を並べて照合してください。
募集要項の読み方に迷ったら
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