内定先の初任給を見て「毎月いくら入るのだろう」と気になる人や、入社後に「5月に振込額が減った」「2年目の6月に減ると聞いた」と戸惑う人に向けて、給与から引かれるものの時期を整理します。
4月入社で、前月分の保険料を控除する会社の場合、手取りが変わり得る時点は4つあります。①4月(雇用保険料と所得税のみ)、②5月(健康保険料・子ども・子育て支援金・厚生年金保険料が加わる)、③10月(9月分から定時決定で決まる標準報酬月額に切り替わり、額が変わる場合がある)、④2年目の6月(住民税が加わる)です。月別の表と、月給22万・25万・28万円の試算で示します。
この記事の前提と数字の出どころ
試算は2026年10月20日時点で公表されている率と表を使い、東京都の協会けんぽ・40歳未満・扶養0人・通勤手当や残業代なし・前月分控除の会社を前提にした編集部の計算です。所得税は、「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している人に使う月額表の「甲欄」で求めています(国税庁 タックスアンサーNo.2511)。
使った数字と出典は次の表のとおりです。
健康保険料率は、都道府県や加入する健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)で異なります。令和9年度(2027年度)の健康保険料率・支援金率・雇用保険料率は、2026年10月時点で未公表です。入社時には率が変わっている場合があります。
令和9年分の表を使う理由は、国税庁が令和8年度税制改正Q&Aで、令和9年1月1日以後に支払う給与は「令和9年分 源泉徴収税額表」を使うよう案内しているためです(国税庁Q&A Q4-1)。2027年4月入社ならこの表が該当します。2028年4月入社の人は、その年の表が公表されたら確認してください。
結論|手取りが変わり得る4つの時点(月別カレンダー)
4月入社・前月分控除の会社の場合、手取りが変わり得るのは「4月の初回」「5月」「10月」「2年目の6月」の4つの時点です。10月は、4〜6月の報酬が入社時と同じ等級に収まれば保険料は変わりません。
| 時期 |
給与から引かれるもの |
起きること |
根拠 |
| 入社前(内定〜3月) |
なし |
労働条件通知書で賃金の締切日・支払日を確認しておく時期です。 |
募集要項 用語集 |
| 1年目4月 |
雇用保険料、所得税 |
前月分控除の会社では、健康保険料・厚生年金保険料はまだ引かれません。 |
日本年金機構「厚生年金保険料等の納付」 |
| 5月 |
上記に加え、健康保険料、子ども・子育て支援金、厚生年金保険料 |
4月分の保険料が引かれ始めます。支援金は令和8年4月分(5月納付分)から加わった項目です。 |
同上 |
| 6〜8月 |
5月と同じ |
入社時に決まった標準報酬月額が、その年の8月まで使われます。 |
日本年金機構 |
| 7月 |
変わらない |
7月1日が定時決定の基準日です。4〜6月の報酬をもとに算定されます。 |
同上 |
| 9月分〜(前月分控除なら10月の給与から) |
保険料の額が変わる場合あり |
4〜6月の報酬で決まった標準報酬月額に切り替わります。 |
同上 |
| 12月 |
所得税の精算 |
年末調整で、年間の源泉徴収税額と年税額を一致させます。 |
国税庁 タックスアンサーNo.2662 |
| 2年目1月 |
変わらない |
1月1日の住所地が、その年度の住民税の課税地になります。 |
総務省「個人住民税」 |
| 2年目5月 |
変わらない |
5月31日までに、特別徴収税額決定通知書が会社に届きます。 |
東京都主税局 |
| 2年目6月 |
上記に加え、住民税 |
天引きが始まり、翌年5月まで12回に分けて引かれます。 |
同上 |
| 2年目9月分〜 |
保険料の額が変わる場合あり |
再び定時決定で標準報酬月額が決まり直します。 |
日本年金機構 |
会社によって、締め日や支払日、当月控除か前月控除かといった運用が違います。入社時に給与規程か、初回の給与明細で確認してください。
1年目4月:初回の給与は社会保険料が引かれない場合がある
前月分の保険料を控除する会社では、4月の給与から引かれるのは雇用保険料と所得税で、健康保険料・厚生年金保険料は5月の給与から引かれ始めます。
日本年金機構は、保険料の控除について次のように案内しています。
当月支払う給料から前月の標準報酬月額にかかる保険料を差し引くことができ…例えば、5月の給料支払日には4月分の保険料を差し引くことになります。
(出典: 日本年金機構「厚生年金保険料等の納付」)
押さえておきたい点を整理します。
- 月の途中で入社した場合も、保険料は資格を取得した月の分から必要になります(日本年金機構FAQ)。
- 当月分を当月の給与から引く運用の会社もあり、その場合は4月から社会保険料が引かれます。
- 資格取得時の標準報酬月額は、入社時の報酬をもとに決まり、資格取得月からその年の8月まで使われます(日本年金機構)。
- 締め日によっては、4月の初回給与が日割りになったり、支払いが5月になったりする場合があります。労働条件通知書の「賃金締切日・支払日」で確認してください。用語は新卒の募集要項 用語集にもまとめています。
月給22万・25万・28万円の手取り試算(4月と5月以降)
編集部の試算では、月給25万円の場合、4月の手取りは242,810円、5月以降は207,266円です。
前提は、東京都の協会けんぽ・40歳未満・扶養0人・通勤手当や残業代なし・前月分控除の会社、保険料率は令和8年度、所得税は令和9年分の月額表(甲欄)です。金額の単位は円です。
| 月給 |
標準報酬月額 |
健康保険 |
子ども・子育て支援金 |
厚生年金 |
雇用保険 |
4月の所得税 |
4月の手取り |
5月以降の所得税 |
5月以降の手取り |
| 220,000 |
220,000 |
10,835 |
253 |
20,130 |
1,100 |
4,810 |
214,090 |
3,740 |
183,942 |
| 250,000 |
260,000 |
12,805 |
299 |
23,790 |
1,250 |
5,940 |
242,810 |
4,590 |
207,266 |
| 280,000 |
280,000 |
13,790 |
322 |
25,620 |
1,400 |
7,010 |
271,590 |
5,510 |
233,358 |
計算の手順は次の3ステップです。
- 協会けんぽ東京支部の保険料額表で標準報酬月額の等級を探し、折半後の額(健康保険・支援金・厚生年金)を引きます。
- 雇用保険料を、月給×5/1,000で求めます。
- 月給から社会保険料等を引いた額で、月額表の甲欄(扶養0人)を引いて所得税を求めます。
月給25万円の5月以降を例にすると、250,000−36,894(健康保険・支援金・厚生年金の合計)−1,250(雇用保険)=211,856円です。211,000〜213,000円の行を見ると所得税は4,590円で、手取りは207,266円になります。
月給25万円は26万円の等級で計算される
健康保険・厚生年金は、実際の月給ではなく「標準報酬月額」に率を掛けて計算します。報酬月額250,000円以上270,000円未満は、標準報酬月額260,000円の等級です(協会けんぽ東京支部の保険料額表)。このため、表の月給25万円の行だけ、標準報酬月額が260,000円になっています。
大卒の初任給の中央値は令和7年調査で251.9千円で、この等級の近くにあります(初任給の中央値と分布)。ただし、統計の所定内給与額には通勤手当なども含まれるため、募集要項に書かれた初任給とは範囲が異なる場合があります。
税額表の年が変わると所得税も変わる
同じ月給22万円の5月以降で比べると、令和8年分の表では所得税が3,910円、令和9年分の表では3,740円です。令和9年分の場合、社会保険料等を引いた後の額は187,682円で、187,000〜189,000円の行にあたります(編集部確認)。年をまたぐと、所得税の額が変わる場合があるという程度に受け取ってください。なお国税庁は、令和9年分以後に給与から源泉徴収する税には防衛特別所得税も含まれると案内しています(タックスアンサーNo.2511)。
扶養控除等申告書を出していない場合は「乙欄」が使われます。令和9年分の月額表では、同じ187,000〜189,000円の行で甲欄(扶養0人)が3,740円、乙欄が14,900円です。申告書を提出している人には甲欄が、提出していない人には乙欄が使われます(この記事の試算は甲欄です)。提出の案内や期限は会社から示されます。
試算に含めていないもの
次の項目は試算に含めていません。
- 通勤手当・残業代・住宅手当
- 賞与
- 1年目の住民税
- 介護保険料(40歳から)
- 会社独自の控除(社員寮費・財形・組合費など)
1年目10月:9月分から保険料の基準が4〜6月の給与に切り替わる
7月1日時点で在籍している人は、4・5・6月に受けた報酬の平均で標準報酬月額が決め直され(定時決定)、9月分の保険料から適用されます。前月分控除の会社では、10月の給与から変わります。
日本年金機構の案内では、7月1日現在の被保険者について、4〜6月の報酬の総額を月数で割って標準報酬月額を決め、その額が9月から翌年8月まで使われます(日本年金機構)。
ここでいう報酬には、基本給のほか、通勤手当・住宅手当・役付手当なども含まれます(日本年金機構)。上の試算は通勤手当を0円としているため、通勤手当が出る人は、月給が同じでも標準報酬月額の等級が上になる場合があります。手当がある人は、試算表と手取りの額が変わります。
4〜6月の手当や報酬が入社時の見込みと違えば、10月以降の保険料が変わる場合があります。昇給などで固定的賃金が変わり、標準報酬月額に著しい差が出た場合は、随時改定という別の見直しが行われることもあります。
1年目12月:年末調整で所得税が精算される
年末調整は、1年間に給与から源泉徴収した所得税と、その年に納めるべき税額を一致させる手続です。多ければ還付され、少なければ徴収されます。
国税庁のタックスアンサーNo.2662によると、対象は「扶養控除等(異動)申告書」を提出している人です(国税庁)。この申告書は、毎月の所得税を甲欄で計算するための書類でもあります(前の章の「乙欄」を参照)。
4月入社の1年目は、その年の給与が4月以降の分だけになります。年末調整の結果が還付になるか徴収になるかは、給与額や控除の内容によって人それぞれ異なります。
2年目6月:住民税の天引きが始まる
住民税は前年1年間の所得に対して課税され、会社員は6月から翌年5月までの12回に分けて給与から引かれます。そのため、4月入社の人は2年目の6月から引かれ始めます。
総務省「個人住民税」によると、住民税はその年の1月1日時点の住所地で課税され、前年1月1日〜12月31日の所得をもとに算定されます。所得割の標準は10%(道府県民税4%・市町村民税6%。政令指定都市は2%・8%)、均等割は4,000円で、2024年度からは森林環境税1,000円が加わります。ただし、税率は都道府県・市町村が定めます(総務省)。
会社の給与からの天引きは、東京都主税局によると次の流れです。毎年5月31日までに特別徴収税額決定通知書が事業主に届き、6月から翌年5月までの月割額を毎月の給与から徴収します(東京都主税局)。
次の点にも注意してください。
- 2年目の6月から引かれる住民税の課税対象は、入社した年の1月1日〜12月31日の所得です。4月以降の給与のほか、1〜3月の学生時代のアルバイト収入なども含まれます。具体的な税額は、所得や控除、自治体で変わるため、本記事では試算していません。
- 学生時代のアルバイト収入によっては、1年目から住民税がかかる場合があります。金額の境目は自治体で異なる場合があるため、お住まいの市区町村で確認してください。
- 住民税は1月1日時点の住所地で課税されます。配属や転居で住所が変わっても、その年度は1月1日時点の自治体の住民税になります。
手当の種類は会社ごとに違う(人事の声より)
給与明細の「手当」欄に何が並ぶかは会社の制度によって異なります。内定先の給与規程や説明で確認しておくと、手取りの見通しを立てやすくなる場合があります。
ツナカレメディアの「人事の声」では、手当や給与の制度について、次のように紹介されています。
- CCコミュニケーションズ株式会社は、社員同士のディスカッションから生まれた「誕生日手当」や、残業時間に頼らず評価で給与を上げていく制度を、現場の声をもとに導入したと紹介されています(「人事の声」2026年3月6日公開)。
- 株式会社SalesDexは、AIを活用した工夫や成果を言語化し、社内外に共有できた場合に支給する「AI活用手当」を設けていると話しています(「人事の声」2026年1月28日公開)。
この2件は取材での紹介です。手当の金額や、保険料・税の計算上の扱いは記事に書かれていません。手当がどう扱われるかは個別に異なるため、本記事では判断しません。
給与規程や初回の明細で、次の点を確認しておくと見通しを立てやすくなります。
- 通勤手当や住宅手当の支給方法
- 保険料は当月控除か、翌月控除か
- 初回給与の締め日と支払日
企業ごとの条件を並べて比べる方法は、企業研究ノートの作り方や会社選びの考え方でも紹介しています。
生活費の見通しを立てるときの使い方
一人暮らしの家賃や奨学金の返済額を考えるときは、額面ではなく「5月以降の手取り」と「2年目6月以降の手取り」の2つの金額で見ておくと、変化に備えやすくなる場合があります。
次の表の空欄を、ご自身の数字で埋めてみてください。
| 項目 |
金額 |
| 5月以降の手取り(上の試算表から) |
|
| 2年目6月以降の手取り(住民税の通知額を差し引く) |
|
| 家賃 |
|
| 奨学金返済 |
|
| 通信費・保険 |
|
| 競技を続ける場合の費用(会費・道具・遠征など) |
|
| 残り |
|
部活の引退時期と入社準備が重なる人もいます。内定後の手続きと合わせて、給与の締め日や支払日を確認しておくと進めやすい場合があります。
この記事で分からないこと
個別の会社の手取り額、住民税の具体額、健康保険組合に加入する会社の保険料は、この記事の試算では分かりません。
確認先は次のとおりです。
- 内定先の人事・給与担当
- 労働条件通知書
- 加入する健康保険の保険料額表
- お住まいの市区町村
まとめ
4月入社で前月分の保険料を控除する会社の場合、手取りは、4月の初回、5月、10月、2年目の6月の4つの時点で変わり得ます。4月は雇用保険料と所得税のみ、5月から社会保険料、10月に定時決定の標準報酬月額へ切り替わり(等級が同じなら保険料は変わりません)、2年目の6月から住民税が加わります。
月給25万円は標準報酬月額26万円の等級で保険料が計算され、試算では4月が242,810円、5月以降が207,266円でした。ただし、当月控除の会社や健康保険組合に加入する会社、手当の有無によって金額は変わります。給与規程と初回の明細で、実際の控除の時期を確認してください。
就活や内定後の準備に迷ったら
入社までの時間を使って就活の書類を整えたい方は、体育会・学生団体のガクチカ 書き方テンプレ&例文集を無料で配布しています。内定後の準備や就活の進め方を相談したい場合は、ツナカレ就活への登録から申し込めます。ご相談にはメールで回答します。