引退前後に応募先を数社に絞り、各社の残業や若手の定着を、口コミ以外の根拠で確かめたい。そんな場面で使える整理です。結論として、公的に確かめられる主な入口は「しょくばらぼ」「女性の活躍推進企業データベース」「有価証券報告書(EDINET)」の3つです。3つは対象企業と載る項目が違うため、企業の規模に合わせて使い分け、数字の定義と時点をそろえて比べます。2026年10月31日に確認した厚生労働省・金融庁の資料を主な出典にしています。
この記事で使う資料と編集部の線引き
使う資料は厚生労働省・金融庁と各公的サイトの公表資料だけで、企業の順位付けや個別企業の推薦はしません。
- 口コミ・独自アンケート・就職四季報の数値は使っていません。
- 体育会出身者に限った企業別データは、制作時に確認した範囲では見当たりませんでした。
- 個別企業名は例として出しません。
企業の働き方データを調べる公的情報は3つ|対象と項目の比較
中小企業まで広く見るなら「しょくばらぼ」、常時雇用101人以上の企業が公表する男女間賃金差異・女性管理職比率と、企業が選んで公表する残業時間・有給休暇取得率などは「女性の活躍推進企業データベース」、上場企業の平均年齢・平均勤続年数・平均年間給与は「有価証券報告書」が入口になります。
| 情報源 |
運営 |
主な対象企業 |
載る主な項目 |
向く使い方 |
| しょくばらぼ(職場情報総合サイト) |
厚生労働省 |
法人番号を持つすべての企業が情報を掲載可能(2025年2月27日のリニューアル以降)。掲載152,380件(2026年10月1日時点) |
月平均所定外労働時間、有給休暇取得、新卒者等の採用・定着状況、育児休業等取得実績、テレワーク制度・副業兼業・正社員転換制度など |
複数企業を一覧で並べて比べる |
| 女性の活躍推進企業データベース |
厚生労働省 |
女性活躍推進法で公表義務がある企業ほか(登録39,615社・2025年12月末時点) |
男女間賃金差異、女性管理職比率、平均残業時間、有給休暇取得率、育児休業取得率、平均継続勤務年数の差異など(企業が選んだ項目) |
101人以上の企業の公表値を確かめる |
| 有価証券報告書(EDINETで閲覧) |
金融庁(EDINET) |
上場企業等の提出会社 |
「従業員の状況」の従業員数・平均年齢・平均勤続年数・平均年間給与、女性管理職比率・男性の育児休業取得率・男女間賃金差異 |
上場企業の過去数年分の推移を見る |
3つは別々の制度で、同じ企業でも項目・時点・集計範囲が違う場合があります。なお、若者雇用促進総合サイトはしょくばらぼの元データの1つです。認定企業の探し方はユースエール認定企業の探し方にまとめています。業界ごとの平均値は業界別の残業時間ランキングで扱っており、本記事は個別企業の数字の調べ方に絞ります。
出典はしょくばらぼ、厚生労働省の2025年3月18日付プレスリリース、厚生労働省Webマガジン、金融庁の公表資料、EDINETです。
しょくばらぼの使い方|企業を並べて数字を比べる
企業名か条件で検索し、気になる企業を一覧にして、同じ項目で比べるのが基本の使い方です。トップページのタグ検索(新卒向け、ワークライフバランスなど)から入る方法もあります。
掲載される情報|3サイトの転載と独自項目
厚生労働省のプレスリリースによると、しょくばらぼには若者雇用促進総合サイト・女性の活躍推進企業データベース・両立支援のひろばの3サイトの情報が転載されています。独自の情報として、証券コード、市場区分、36協定に関する情報、社会保険適用の有無、中途採用比率(直近3事業年度)、自由PR欄があります。2025年2月27日には、テレワーク制度、副業・兼業、正社員転換制度、中途採用・経験者採用の定着率、定年制、取得可能資格、オンボーディング制度・フォロー体制が追加されました。
2026年3月4日のリニューアルでは、ユーザー登録をすると検索条件や職場情報を保存できるようになりました(厚生労働省の資料)。応募先を数社に絞ったあと、同じ画面で見直すときに使えます。
新卒の就活で見ておきたい項目
若者雇用促進総合サイトの項目定義に沿うと、次の項目が新卒の就活では見やすい部分です。
| 項目 |
定義 |
読み方のポイント |
| 新卒者等の採用者数と離職者数 |
直近3事業年度に正社員として就職した新卒者等の数と、そのうち同期間に離職した数 |
人数で載ります。離職率は自分で計算します |
| 平均勤続年数 |
正社員が対象 |
長さだけでなく、過去からの変化も見ます |
| 平均年齢 |
正社員が対象 |
社員の年代構成の目安になります |
| 月平均所定外労働時間 |
前事業年度の正社員1人当たり(管理職を除く) |
会社全体の平均で、部署差は見えません |
| 有給休暇の取得日数 |
前事業年度の正社員1人当たりの年間合計 |
日数で載ります。女性の活躍推進企業データベースの「取得率」とは単位が違うため、並べて比べないようにします |
| 研修・メンター制度など |
有無と内容 |
内容が具体的に書かれているかを見ます |
企業が提供する項目を選べるため、すべての企業にすべての項目があるとは限りません。
女性の活躍推進企業データベースの見方|2026年4月から公表範囲が拡大
2026年4月1日施行の改正女性活躍推進法で、常時雇用101人以上の企業は男女間賃金差異と女性管理職比率の公表が必須になりました。これに加えて、残業時間や有給休暇取得率などの項目から企業が選んだものも公表されます。性別を問わず、企業が公表した残業・有給・育休・勤続年数の値を確かめられる公的データベースとして使えます。
| 企業規模 |
改正後の公表義務 |
| 301人以上 |
男女間賃金差異+女性管理職比率+2項目以上(2区分から各1項目以上) |
| 101〜300人 |
男女間賃金差異+女性管理職比率+1項目以上 |
| 100人以下 |
努力義務 |
出典は厚生労働省の資料(令和7年6月11日公布、令和8年4月1日施行)です。
選択項目のうち、働き方を考える材料になるものは次のとおりです。
- 労働者の一月当たりの平均残業時間
- 有給休暇取得率
- 男女別の育児休業取得率
- 男女の平均継続勤務年数の差異
- 採用した労働者に占める女性労働者の割合
公表のタイミングに注意
新たに義務になった項目(101〜300人の企業の男女間賃金差異と、101人以上の企業の女性管理職比率)の初回公表は、施行後最初に終了する事業年度の実績を、次の事業年度開始後おおむね3か月以内に行う流れです。たとえば令和9年3月末に事業年度が終わる企業は、おおむね令和9年6月末までに公表します。そのため、2026年秋の時点では、新しい必須項目がまだ載っていない企業もありえます。なお、301人以上の企業の男女間賃金差異は、令和4年7月8日から公表が義務付けられています。
管理職は課長級以上(役員を除く)と定義されています。公表の場は女性の活躍推進企業データベースが最も適切とされつつ、自社サイトでの公表も認められています。データベースに載っていなければ、企業の採用ページも見ます(出典は上記の厚生労働省の資料)。
厚生労働省Webマガジンは、学生に対して、数値だけでなく改善に向けた取組内容や過去からの変化にも注目することを勧めています。
有価証券報告書の見方|上場企業は「従業員の状況」を開く
上場企業なら、EDINETで有価証券報告書を開き、「第一部 企業情報」の「第1 企業の概況」にある「従業員の状況」を見ると、「提出会社の状況」の表で従業員数・平均年齢・平均勤続年数・平均年間給与が確認できます。EDINETは会社名で検索できます。
2023年3月期以降は女性管理職比率なども載る
金融庁の開示府令改正(2023年1月31日公表)により、2023年3月31日以後に終了する事業年度の有価証券報告書から、女性活躍推進法等で公表している場合は、「従業員の状況」に女性管理職比率・男性の育児休業取得率・男女間賃金差異を記載する扱いになりました。
読むときの注意
- 数字は「提出会社」単体が中心で、グループ会社に配属される場合は当てはまらないことがあります。持株会社の形をとる企業では、提出会社の従業員が本社機能の人に限られる場合があります。
- 平均年間給与は全年齢・全職種の平均で、新卒の初任給とは別のものです。
- 1年分だけでなく、過去の報告書と並べて推移を見ます。たとえば平均勤続年数が短くなっていないかを確かめます。厚生労働省のリーフレットにも、上場企業は投資家向けに人的資本情報を開示しており、企業選択の参考になるという趣旨の記述があります。
数字を比べるときの注意点4つ
定義(分母)・時点・対象範囲・経年変化の4点をそろえないと、企業間の比較を読み違える場合があります。厚生労働省のリーフレットは、離職率など企業が任意で開示する情報は分母が企業ごとに異なることもあること、情報の更新時点を確認すること、経年変化や今後の方針も併せて確認することを挙げています。
1. 分母をそろえる
同じ会社でも、何を分母にするかで離職率の見え方は変わります。次の表は計算の流れを示すための架空の例です。
| 架空の例 |
分母 |
離職者 |
離職率 |
| 新卒者ベース |
直近3事業年度の新卒採用30人 |
同期間に3人 |
10% |
| 全従業員ベース |
全従業員300人 |
年間15人 |
5% |
この例では分母だけでなく、数える期間(3事業年度と1年間)も違います。説明会などで率を聞いたときは、「何人のうち何人か」「どの期間か」を合わせて確かめると比べやすくなります。若者雇用促進総合サイトなどは人数で載るため、新卒者ベースの率は自分で計算できます。全国統計の3年以内離職率とも定義が違うため、新卒の離職率データの読み方も合わせて確認してください。
2. 時点をそろえる
しょくばらぼ、女性の活躍推進企業データベース、有価証券報告書では、数字の対象となる事業年度や更新時点が違う場合があります。比べる企業どうしで、同じ年度の数字を見ているかを確認します。
3. 対象範囲を確かめる
数字ごとに対象が違います。たとえば若者雇用促進総合サイトの月平均所定外労働時間は正社員で管理職を除く数字、有価証券報告書の平均年齢などは提出会社単体の数字です。同じ「残業時間」でも、情報源によって対象者の範囲が同じとは限りません。比べる前に、何人分の数字かを見ます。
4. 1年分でなく推移で見る
1年分だけだと、たまたまの増減か、傾向かが分かりません。可能なら過去の数字と並べて、変化の向きを見ます。
調べた数字を説明会・OB訪問の質問に変える
公的データは会社全体の平均なので、配属先や職種の実態は、説明会・面談・OB・OG訪問で確かめます。数字を根拠に質問すると、聞きたいことを具体的にしやすくなります。
ツナカレメディアの東北大学アイスホッケー部OBの取材記事(2026年1月22日掲載)では、部活動を最後まで続けながら就職活動をしたため、エントリーした企業は約6社に絞られていたと話しています。応募先が少ないときほど、1社ずつ数字と実態を確かめる意味が大きくなる場合があります。また、社会人になっても競技を続けたい場合は、平日の残業時間や有給休暇の数字が、練習時間を考える材料の1つになります。
また、IT企業の株式会社SPIN TECHNOLOGYは、入社前のギャップをなくすため、厳しさも含めて事前に伝えるようにしていると、ツナカレメディアの取材(2026年1月27日掲載)に答えています。取材した1社の例で、すべての企業が同じとは限りません。
| 調べた数字 |
確かめたいこと |
質問例 |
| 月平均所定外労働時間 |
配属部署の繁忙期の差 |
公表の数字は会社全体の平均と拝見しました。繁忙期はいつ頃で、その時期の働き方はどう変わりますか |
| 有給の取得日数 |
若手が取る時期 |
若手の方は、どのような時期に有給を取っていることが多いですか |
| 新卒の採用者数と離職者数 |
入社3年目までのフォロー |
入社1〜3年目の方には、どのようなフォローがありますか |
| 平均勤続年数 |
年次ごとの役割の変化 |
年次が上がると、役割はどのように変わりますか |
| テレワーク・副業制度 |
新卒の利用状況 |
制度は、新卒の方でも使われていますか |
質問は丁寧な敬語で、詰問調にならないようにします。「長く働きたいので」と理由を添えるのも1つの方法です。
厚生労働省のリーフレットのとおり、提供された情報はSNSへの投稿などに転用しないよう注意します。数字が載っていない場合は、若者雇用促進法に基づく青少年雇用情報として企業に求める方法があります。同じリーフレットでは、新規学卒者等の募集を行う事業主が、募集・採用の状況、職業能力の開発・向上、職場への定着の促進に関する情報を提供する対象とされています。問い合わせ文の例は募集要項の用語集で紹介しています。調べた内容の記録方法は、ツナカレメディアの企業研究ノートの作成方法も参考になります。
まとめ
企業の残業や離職の数字は、しょくばらぼ、女性の活躍推進企業データベース、有価証券報告書の3つで調べられます。企業の規模によって載る情報が違うため、中小企業から上場企業まで、使い分けます。比べるときは、分母・時点・対象範囲・推移の4点をそろえてください。公的データは会社全体の平均なので、配属先の実態は説明会やOB・OG訪問で確かめるのが現実的です。志望企業の数字の読み方や質問の作り方に迷ったら、ツナカレ就活の無料相談をご利用ください。