部活で平日の日中に動きにくいなか、無料のエージェントや就活サイトに頼りたい気持ちはあっても、「なぜ無料で使えるのだろう」「あとで何かあるのでは」と気になる場面があります。
結論から言うと、学生が無料で使えるのは、費用を学生以外(国、大学、採用企業)が負担しているか、お金ではなく人の好意で成り立っているからです。無料であること自体が問題なのではありません。ただ、費用の出どころによって、得意な範囲と偏りやすい点が変わります。出どころを知ってから使い分けると、1つの窓口に頼りすぎるのを避けやすくなります。
相談したい中身ごとの相談先の選び方は体育会の就活は誰に相談する?で、エージェントを使うか自己応募にするかは就活エージェントと自己応募どちらがいい?で扱っています。この記事は「無料の仕組み」と「利用前の確認方法」に絞ります。特定のサービスをすすめる記事ではありません。
就活の無料サポートは「費用を誰が負担しているか」で5つに分けられる
無料の就活サポートは、費用の出どころで「公費」「大学」「採用企業の紹介手数料」「採用企業の掲載料・利用料」「お金のやりとりがない人のつながり」の5つに分けられます。
| 種類 |
代表例 |
費用を負担している主体 |
学生の負担 |
| ① 公的な窓口 |
新卒応援ハローワーク |
国(公的サービス) |
無料 |
| ② 大学の窓口 |
キャリアセンター |
大学(学生向けのサービスとして提供) |
在学生は無料で使える |
| ③ 職業紹介(就活エージェント) |
担当者が求人を紹介し、選考対策を行うサービス |
採用が決まった企業が支払う手数料が多い |
原則なし(法律) |
| ④ 求人情報・スカウトの提供(就活サイト・逆求人型) |
企業の情報を載せるサイト、企業から声がかかる仕組み |
一般的には、求人を載せる企業やスカウトを送る企業が払う掲載料・利用料 |
無料のものが中心 |
| ⑤ 人のつながり |
部のOB・OG、先輩、OB会 |
お金のやりとりはなく、相手の時間と好意 |
無料 |
大学の窓口については、財源の内訳までは公開情報から言い切れないため、「学生向けのサービスとして提供されている」と整理しています。④の収益の仕組みはサービスごとに異なるため、「一般的には」としています。また、授業料のかかる就活塾のような有料サービスは、この記事の対象外です。
同じ「無料」でも、誰がお金を出しているかで、紹介してくれる範囲や連絡の進み方が変わりうる、というのがこの記事の出発点です。次の節から、種類ごとに仕組みと偏りやすい点を見ていきます。
就活エージェントが無料なのは、採用が決まった企業が手数料を払う仕組みだから
就活エージェント(職業紹介)は、紹介した学生の採用が決まったときに企業から手数料を受け取る仕組みが多く、法律でも求職者から手数料を取ることは原則として禁じられています。
法律で決まっていること
職業安定法第32条の3第2項で、有料職業紹介事業者は原則として求職者からは手数料を徴収してはならないと定められています(厚生労働省令で定める例外があります。職業安定法(e-Gov法令検索))。
エージェントが学生から利用料を取らない背景には、この法律上の枠組みがあります。では運営の費用はどこから出ているのかというと、紹介した学生の採用が決まった企業が手数料を支払う形が多く見られます。金額や支払条件は事業者と企業の契約によって異なります。各事業者の手数料に関する情報は、後述の人材サービス総合サイトで確認できます。
仕組みから生じやすい偏り
エージェントが紹介できるのは、そのサービスが扱う求人に限られます。自分が気になる企業が、そのサービスに求人を出しているとは限りません。
また、採用が決まることで収益が生まれる仕組みのため、紹介の範囲や連絡の進め方が、その仕組みの影響を受ける可能性があります。これは、すべてのエージェントがそうだという意味ではありません。仕組みを知っておくと、「なぜこの企業が多く紹介されるのだろう」と感じたときに、自分の志望と照らして立ち止まりやすくなります。紹介された企業に応募するかどうかは、学生の側で決めてよいことです。
報道された注意喚起の内容や、利用前に確認したい質問は就活エージェントと自己応募どちらがいい?にまとめているので、ここでは繰り返しません。
就活サイトや逆求人型サービスは、企業の掲載料や利用料で成り立つことが多い
一般的には、求人情報を載せる企業や学生にスカウトを送る企業が費用を払う仕組みで、学生は無料で使えるものが中心です。
学生側の画面は無料でも、その裏では企業が掲載や利用のための費用を払っている、という構造です。このため、サイトの一覧に並ぶのは、そのサービスに掲載している企業(費用を払って載せている企業)が中心になります。世の中の求人全体が並んでいるわけではありません。検索結果の並び順や、おすすめとして表示される企業も、サービスの設計によって決まる部分があります。気になる企業がサイトに載っていない場合は、企業の採用ページを直接確認する方法もあります。
逆求人型のサービスでは、学生がプロフィールを登録し、それを見た企業が声をかけてきます。自分で企業を探す手間が減る一方で、プロフィールがどの企業に見えるのか、という個人情報の扱いも確認しておきたい点です。
2025年4月からのルール
厚生労働省によると、令和7年(2025年)4月1日から、募集情報等提供事業者による労働者への金銭やギフト券等の提供が原則として禁止になりました(例外は指針で定められています)。求人情報を提供するサービスは、職業安定法上の「募集情報等提供事業者」にあたる場合があります(出典: 厚生労働省「雇用仲介事業者(職業紹介事業者、募集情報等提供事業者)への新たなルール」)。
登録や利用の特典として大きな金品をうたうサービスを見かけたときは、運営会社がその特典をどう説明しているのかを確認するきっかけにできます。個別のサービスがこのルールの対象かどうか、特典がルールに当たるかどうかは、この記事では判断できません。
同じ改正で、職業紹介事業者には、紹介手数料の実績を人材サービス総合サイトに掲載することが義務づけられました。この点は、後述の確認方法の節で使います。
新卒応援ハローワークと大学のキャリアセンターは、公的・学内の無料窓口
新卒応援ハローワークは国が無料で就職支援を行う公的な窓口、キャリアセンターは大学が在学生向けに設けている学内の窓口です。
新卒応援ハローワーク
厚生労働省のページによると、新卒応援ハローワークは各都道府県に1か所以上、全国に56か所あります。対象は、大学等を卒業予定の学生と、卒業後おおむね3年以内の人です。担当者による個別支援、応募書類の作成支援、面接対策、セミナー、全国の求人検索、企業説明会・面接会、就職後の定着支援などを、「無料でさまざまな就職支援を行っている」と案内されています(厚生労働省「新卒応援ハローワーク」)。
費用の出どころが公的なサービスなので、特定の企業の採用が決まったかどうかが窓口の収益になる仕組みではありません。
偏りやすい点としては、開庁時間と場所が決まっているので、練習と重なる時間帯には使いにくい場合があることです。利用できる時間や最寄りの窓口は、各窓口で確認してください。
大学のキャリアセンター
キャリアセンターは、大学が在学生向けに設けている窓口です。支援の内容や予約方法は大学ごとに異なるため、自分の大学のページで確認します。
キャリアセンターは、無料の学外サービスで困ったときに相談できる場所でもあります。学外の就活支援団体について、注意喚起を出している大学があります。たとえば立命館大学キャリアセンターの注意喚起では、大学非公認の就職活動支援団体が、SNSや学生同士のつながり、就活関連イベントを通じて勧誘してくることがあるとしています。そのうえで、「断っているのにしつこく勧誘される」「利用しないと就職活動がうまくいかないと不安を煽られる」といった困りごとがあるとして、個人情報の取り扱いの確認と、困ったときのキャリアセンターへの相談を呼びかけています(立命館大学キャリアセンター)。
無料で使えるサービスであっても、使ってみて困ったことがあれば、学内の窓口に話せる状態にしておくと安心です。
OB・OGや部の先輩への相談は、お金ではなく人のつながりで成り立つ
お金のやりとりがない代わりに、相手の時間と好意で成り立っているので、聞く範囲を絞り、お礼と報告を欠かさないことが、続けるための前提になります。
部によっては、先輩に相談できる仕組みがすでにあります。小樽商科大学男子ラクロス部は、毎年OB戦とあわせて、OB・OGによる就活相談会を開いていると取材で語っています(ツナカレメディア 2026年3月16日の取材記事)。自分の部にそうした場があるなら、個別に頼む前に、まずそれを確認する方法があります。
OB訪問に時間をかけた人の声もあります。成蹊大学体育会サッカー部の卒業生は、「とにかくいろいろな会社を見てみたいと思って、OB訪問に時間をかけました。」と話しています(ツナカレメディア 2026年4月1日の取材記事)。これはこの卒業生自身の経験であり、OB訪問の効果を一般化するものではありません。
偏りやすい点は、話がその人の経験と勤め先の範囲を前提にすることです。就活の時期や選考の形式は、その人が就活をした当時から変わっている場合もあります。1人の話だけで判断せず、他の窓口の情報と照らして確認してください。訪問依頼の文面や質問は体育会のOB・OG訪問のやり方にまとめています。
費用の出どころ別に見る「得意な範囲」と「偏りやすい点」
費用の出どころが違うと、得意な範囲も偏りも違います。出どころの異なる窓口を組み合わせると、1つの仕組みの偏りを別の窓口で補いやすくなります。
| 種類 |
得意な範囲 |
偏りやすい点 |
使う前に確かめること |
| エージェント |
扱う求人への応募、選考対策、日程調整 |
紹介はそのサービスの求人に限られる |
許可の有無、紹介の範囲、連絡の頻度 |
| 就活サイト・逆求人 |
多くの企業情報を一度に見る、企業から声がかかる |
掲載している企業が中心 |
特典の内容、個人情報の公開範囲 |
| ハローワーク |
求人検索と、相談・書類・面接対策を1か所で |
開庁時間と場所の制約 |
開庁時間、最寄りの窓口 |
| キャリアセンター |
進め方、書類、学内の情報 |
支援内容は大学ごとに差がある |
予約方法、受付時間 |
| OB・OG等 |
働く側の実感 |
その人の経験の範囲、時期のずれ |
相手の都合、聞く範囲 |
情報源が1つに偏ると、選択肢が狭まりやすい、という声もあります。東海大学アメリカンフットボール部の卒業生は、アメフト中心の生活で、情報収集が十分でないまま1社目の進路を決めたことを振り返っています。転職の際にはエージェントに積極的に相談したそうです(ツナカレメディアの取材記事)。これは新卒ではなく転職の場面の話で、1人の経験です。ここから言えるのは、情報源が限られると選択肢が狭まりやすい場合がある、という範囲にとどまります。
平日の日中に動きにくい時期の組み合わせ例
練習や試合で平日の日中に動きにくい時期は、時間の制約が少ない窓口と、人に直接聞ける窓口を1つずつ持つという方法があります。
- 就活サイトで企業情報を夜に見て、キャリアセンターで書類の相談を予約する
- エージェントの担当者に連絡できる時間帯を伝えて日程調整を任せつつ、部のOB・OGに業界の話を聞く
- 時間をとれる週にハローワークの窓口で求人検索と面接対策を済ませ、普段は文章で相談できる窓口を使う
どれも一例です。時期の目安はツナカレメディアの体育会の就活時期の解説も参考になります。
利用前に、事業者を公的なサイトで確かめる方法
就活エージェントのような職業紹介事業者は、厚生労働省が運営する「人材サービス総合サイト」で、許可を受けた事業所かどうかや、紹介手数料の実績・就職者数・離職者数・返戻金の有無などの情報を確認できます。
佐賀労働局のページによると、人材サービス総合サイトでは、紹介手数料の実績、就職者数、離職者数、返戻金の有無などを確認できます。法令違反の疑いがある場合は、最寄りの都道府県労働局で相談を受け付けているとされています(佐賀労働局「民間人材サービスの利用によるトラブルにご注意ください」)。
確認の手順の例です。
- 使いたいサービスの運営会社名を確認し、運営会社のサイトに許可番号が載っているか確認する
- 「人材サービス総合サイト」で、会社名などから事業所を探す(画面の名称や項目は変わる場合があります)
- 表示される手数料、就職者数、離職者数などの情報を見る(表示される項目は、事業者や時期によって異なる場合があります)
- 分からない点は、運営会社に質問する
許可番号がサイトに見つからない場合や、検索しても事業所が出てこない場合は、その理由を運営会社に尋ねてみる方法があります。求人情報の掲載だけを行うサイトのように、職業紹介を行わないサービスは、この検索で見つかるとは限りません。その場合は、運営会社の説明や利用規約で、個人情報の扱いと特典の内容を確認します。
無料でも差し出しているもの(時間と個人情報)
無料のサービスでも、面談や連絡に使う時間と、登録する個人情報は差し出しています。登録前に、次の3点を確認しておくと安心です。
- 個人情報の利用目的(何に使われるか)
- 公開範囲(逆求人型ではプロフィールがどの企業に見えるか)
- 連絡手段と頻度(電話かメッセージか、時間帯を選べるか)
前述の立命館大学の注意喚起でも、個人情報の取り扱いの確認が呼びかけられていました。エージェントを使う前に確認したい質問の一覧は、就活エージェントと自己応募どちらがいい?に表でまとめています。
困ったとき
利用中に困ったことがあれば、まず大学のキャリアセンターに相談できます。法令違反の疑いがある場合は、最寄りの都道府県労働局が相談を受け付けています。
まとめ|「無料かどうか」より「誰が費用を払っているか」で使い分ける
無料の就活サポートは、費用の出どころによって得意な範囲と偏りやすい点が変わるため、「無料かどうか」より「誰が費用を払っているか」で使い分けると、偏りに気づきやすくなります。
- 無料のサポートは、公費、大学、採用企業の紹介手数料、採用企業の掲載料・利用料、人のつながり、の5つに分けられる
- エージェントは法律上、学生から手数料を取らないのが原則で、紹介の範囲はそのサービスの求人に限られる
- 就活サイトや逆求人型は企業が費用を払う仕組みが一般的で、一覧に並ぶのは掲載企業が中心になる
- 利用前に、人材サービス総合サイトで事業者を確認し、個人情報の扱いと連絡の頻度を確かめる
部活経験をガクチカにする作業から手をつけたい場合は、体育会・学生団体のガクチカ 書き方テンプレ&例文集を無料で配布しています。どの窓口に何を相談するかを整理したい場合は、ツナカレ就活に登録いただくと、就活のご相談にメールで回答します。