「引退したら、そのまま大学院に進むか、就職するか」。部活を続けてきた体育会の学生の中には、研究室や専攻の勉強に打ち込みたい気持ちと、就職して社会に出たい気持ちのあいだで迷う方もいるのではないでしょうか。
結論から言うと、大学院に進むかどうかは、進学の目的、競技との関わり、院試と就活の時期の重なり、面接での説明の4つの軸で整理すると、自分の状況で考えやすくなります。 この記事は、進学をすすめるものでも、就職をすすめるものでもありません。判断の材料と、確認の仕方を並べます。
卒業を1年延ばす選択肢は体育会の就職留年は考えるべき?で、内定がないまま引退した場合の全体像は部活を引退したのに内定がない体育会の学生へで扱っています。この記事は、大学院進学を軸に考えたい方向けです。
大学院に進む学生は、全体でどのくらいか
文部科学省「学校基本調査」の令和7年度の結果では、大学(学部)の卒業者のうち、大学院等へ進学した人の割合は12.7%でした。 前年度より0.1ポイント上昇しています(出典: 文部科学省「学校基本調査-令和7年度 結果の概要-」)。同じ調査で、卒業者に占める就職者の割合は77.0%です。数字の読み方は体育会学生の就職率データの読み方で整理しています。
ただし、この調査には部活動の所属を区分する項目がありません。体育会の学生だけの進学率は、公的統計から取り出せません。 数字は「全体の中では大学院進学が少数派の進路の一つである」ことを示すにとどまり、自分が進学すべきかどうかを決める材料にはなりません。
判断軸1|何のために進学するのかを言葉にする
最初に、大学院で何を深めたいのかを、一文で書けるかどうかを確認します。 目的が曖昧なまま進学すると、2年後の就活で同じ迷いが戻ってくる場合があります。
進学の目的として、次のようなものが考えられます。
| 目的の例 |
確認しておくこと |
| 研究分野を深めたい(専門性を仕事に活かしたい) |
志望する職種で、修士の専門が求められる募集があるか |
| 研究職・技術職など、募集要件が修士以上の仕事に就きたい |
志望する企業の募集要項の応募資格 |
| 引退後の時間をもう少し学びに使いたい |
学びたい内容が、学部のうちにできないのか |
| 就活の準備が間に合わず、時間が欲しい |
進学以外に時間を確保する方法はないか(既卒での応募など) |
民間の就活解説では、進学を勧める基準として、希望する就職先と研究内容が合致している場合を挙げる一方、就職から逃げるためのモラトリアム期間としての進学は勧めない、という整理が紹介されています(出典: インターンシップガイド「大学院進学と就職への影響」)。これは一つの解説サイトの整理ですが、「進学で何を得たいのか」を言葉にしておくという点は、判断の出発点になります。
目的が「就活の時間が欲しい」だった場合は、大学院に進む前に、ほかの方法で同じ時間を確保できないかも合わせて見てみます。
判断軸2|競技との関わりは、進学後にどうなるか
大学院に進んだあとも競技を続けたいか、引退するかを決めておくと、進学先や時期の判断がしやすくなります。 大学院生が部活動に在籍できるか、公式戦に出られるかは、大学の規程や所属する連盟のルールによって異なります。一般的な答えは示せないため、次の確認先で、実際の規程を確認します。
| 確認すること |
確認先の例 |
| 大学院生として、選手登録や出場ができるか |
部の顧問や監督、所属する連盟の規約 |
| 部の内規で、学部生と異なる扱いがあるか |
部の幹部、OB・OG |
| 学生コーチなど、競技以外の関わり方があるか |
監督、コーチ |
| 研究室の日程と、練習・試合の両立が可能か |
研究室の指導教員、先輩 |
引退して競技から離れる場合は、その時間を院試や研究、就活にどう使うかを考えます。競技を続ける場合は、研究と練習の両立が、学部時代より負担にならないかを、先輩の例などを聞いて確認する方法があります。
判断軸3|院試と就活、時期がどう重なるかを書き出す
院試の日程と、企業の選考日程、部活の日程を一枚の表に並べると、重なりが見えやすくなります。 院試の日程は、大学や研究科ごとに公表される募集要項で決まっており、この記事では示せません。
並べる項目の例です。
| 項目 |
確認先 |
書き込むこと |
| 志望する大学院の出願期間・試験日 |
各研究科の募集要項 |
出願の締切、試験日、合格発表日 |
| 志望する企業の選考日程 |
企業の採用ページ、案内メール |
ESの締切、Webテスト、面接の候補日 |
| 部活の大会・合宿・遠征 |
部の年間予定 |
公式戦、合宿、引退の時期 |
| 卒業研究や授業の提出物 |
大学のシラバス、研究室 |
中間発表、提出の締切 |
就活と院試を同時に進めると、同じ時期に別の準備が重なって、どちらにも十分な時間を割けなくなる場合があります。たとえば、院試の勉強期間と企業のES提出が同じ週に重なる、といった状況です。表で見える化したうえで、どちらを先に進めるか、並行する場合は何を減らすかを決めます。
進学を選んだ場合でも、大学院での就活は、研究と並行して進める形になります。民間の大学院生向け解説では、修士1年の6〜7月ごろから、インターンシップの選考開始に合わせて自己分析や業界研究を始めておくとよいという説明があります(出典: リアシュ「大学院生(修士)のリアルな就活事情」)。進学すれば就活の負担がなくなるわけではなく、準備の時期が後ろにずれることになります。
学部の就活スケジュールとの比較や、資格試験などほかの予定との並べ方は、体育会の就活と資格試験の両立も参考になります。
判断軸4|面接で進学や進路の選択をどう説明するか
大学院に進んだ場合、就活の面接では、進学の理由や研究内容について説明を求められる可能性があります。 一方、学部卒で就職する場合も、なぜ進学しなかったのかを聞かれる可能性は考えられます。どちらを選んでも、自分の選択の理由を、事実と今後の方向性につなげて説明できる状態にしておくと安心です。
説明を整理するときの視点は次の3点です。
- 進学(または就職)を選んだ理由を一文で述べる(例: 研究テーマが志望する職種につながっているため)
- その選択のもとで取り組んだことを具体的に述べる(例: 研究で身につけた方法、部活での役割)
- 今後の志望理由につなげる(例: その経験を仕事でどう活かすか)
部活動の経験は、進学を選んだ場合も就職を選んだ場合も、ガクチカや自己PRの材料になります。進学した場合も、競技で培った経験を志望理由の裏づけとして使える場合があり、進路の選択だけで評価が決まるとは限りません。
取材に見る、進学と就活の時期の考え方
ツナカレメディアの取材から、進学や就活と部活動の関わりに関する声を紹介します。いずれも個人や部の体験で、すべての人に当てはまるわけではありません。
- ある大学のテコンドー部の取材では、3・4年生になると就職活動や院試の勉強などで部活以外の予定が増え、参加頻度が少なくなると紹介されています(取材記事、2026年8月4日取材)。進学を考える学生と就職を考える学生が、同じ時期に練習への関わり方を調整している例です。
- ある大学のフライングディスク部のOBは、理系の専門性を活かせる分野としてITを選び、コンサルティングファームのシステム職に就いたと話しています(取材記事、2026年8月28日掲載)。大学院で情報系の研究に取り組んだうえで、専門を軸に就職先を選んだ例の一つです。
- ある大学のサッカー部のOBは、不動産業界で働きながら高校サッカー部のコーチを約8年半続け、サッカーに関わる仕事がしたいという思いが強くなり、30歳のときに海外の大学院に進学したと話しています(取材記事、2026年3月24日取材)。就職後に大学院に進む道もあることがわかる例です。
これらは「進学すべき」「就職すべき」を示すものではありません。進学や就職のタイミングは一つに決まっておらず、目的に合わせて選んでいるという点が共通しています。
決める前に確認したい6つのこと
進学を選ぶか見送るかにかかわらず、次の確認をしておくと、後から見直しやすくなります。
まとめ|迷ったら、目的と時期の2つを書き出すことから
体育会の大学院進学と就活は、進学の目的、競技との関わり、院試と就活の時期の重なり、面接での説明の4つの軸で整理すると、考えやすくなります。進学も就職も、どちらが正しいかは一つに決まりません。まずは目的と時期を表に書き出し、確認できる事実を並べてから選ぶ方法があります。
一人で決めきれない場合は、大学のキャリアセンターや研究室の指導教員、部のOB・OGに相談する方法もあります。ツナカレ就活でも無料相談を受け付けています。