業界を選ぶとき、給料がどのくらい違うのかは気になるところです。ただ、ネット上の「年収ランキング」は、出典や計算方法が記事によって異なる場合があります。この記事では厚生労働省の公的統計1つだけを使い、16産業を全年齢と20代で並べ直しました。なお、ここで扱う数字は月額の所定内給与で、年収そのものではありません。ランキングは業界の向き不向きや将来の収入を保証するものではなく、業界を知る入口としての整理です。

この記事の数字の出どころと「年収」との違い

使うのは「賃金構造基本統計調査」の産業別の月額賃金(所定内給与額)で、残業代と賞与を含まないため、年収ではありません。

所定内給与額とは、きまって支給する現金給与額から超過労働給与額(時間外勤務手当・深夜勤務手当・休日出勤手当・宿日直手当・交替手当)を差し引いた額で、所得税等を控除する前の金額です。この記事の線引きは次のとおりです。

  • 公表されている数値をそのまま並べています。
  • 年収や手取りへの換算はしていません。
  • 新卒の産業別の初任給は、概況に載っていないため扱いません。
  • 転職サイトの想定年収や、企業別のデータは使いません。

調査の概要は次のとおりです。

項目 内容
調査名 令和7年賃金構造基本統計調査
実施主体 厚生労働省
調査対象 日本標準産業分類に基づく16大産業
調査時期 2025年6月分の賃金について2025年7月に調査
集計対象 有効回答59,836事業所のうち、10人以上の常用労働者を雇用する民営事業所52,242事業所
調査対象数・有効回答率 79,321事業所・75.4%
公表日 2026年3月24日

(出典: 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」 1〜4ページ)

この記事の賃金は「一般労働者」(短時間労働者以外)の数字で、正社員と正社員以外の両方を含みます。参考として、全産業で見た新卒の値も確認しておきます。大学卒の新規学卒者は262.3千円(前年比5.6%増)、勤続0年の賃金は274.5千円です。勤続0年には新卒以外の中途入社者や大学卒以外の人も含まれるため、2つの数字は一致しません。また、どちらも産業別ではなく全産業の数字です。

(出典: 令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況 14ページ・16ページ)

結論|全年齢では電気・ガスが444.0千円で1位、最下位の宿泊・飲食とは166.8千円差

全年齢の賃金が最も高いのは電気・ガス・熱供給・水道業の444.0千円で、最も低い宿泊業,飲食サービス業の277.2千円との差は166.8千円(編集部算出)です。

一般労働者全体の賃金は340.6千円(平均44.4歳、勤続12.7年、前年比3.1%増)です。16産業のうち、この全体平均を上回るのは1〜9位の9産業(編集部算出)でした。

(出典: 令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況 6〜7ページ)

業界別の平均賃金ランキング(16産業・全年齢)

全年齢のランキングは、電気・ガス・熱供給・水道業、学術研究,専門・技術サービス業、金融業,保険業の順に上位が並びます。

順位 産業 賃金 平均年齢 平均勤続年数 前年比 令和6年(順位)
1 電気・ガス・熱供給・水道業 444.0千円 43.1歳 17.6年 +1.5% 437.5千円(1位)
2 学術研究,専門・技術サービス業 440.3千円 42.9歳 12.1年 +9.6% 401.8千円(3位)
3 金融業,保険業 437.0千円 44.2歳 14.6年 +6.4% 410.6千円(2位)
4 情報通信業 406.0千円 40.2歳 12.3年 +3.8% 391.0千円(4位)
5 鉱業,採石業,砂利採取業 388.3千円 48.5歳 13.9年 +4.3% 372.3千円(6位)
6 教育,学習支援業 379.4千円 44.2歳 11.7年 +0.9% 376.2千円(5位)
7 建設業 366.3千円 45.5歳 13.7年 +3.9% 352.6千円(8位)
8 不動産業,物品賃貸業 360.1千円 43.9歳 10.7年 −3.1% 371.6千円(7位)
9 卸売業,小売業 349.1千円 44.3歳 14.5年 +1.6% 343.6千円(9位)
10 製造業 330.0千円 44.1歳 15.3年 +3.6% 318.6千円(10位)
11 複合サービス事業 319.0千円 44.9歳 16.8年 +3.9% 306.9千円(11位)
12 医療,福祉 315.7千円 44.0歳 9.9年 +3.0% 306.4千円(12位)
13 運輸業,郵便業 312.7千円 48.7歳 12.9年 +2.6% 304.7千円(13位)
14 生活関連サービス業,娯楽業 295.2千円 42.3歳 10.6年 +3.3% 285.7千円(15位)
15 サービス業(他に分類されないもの) 284.9千円 45.9歳 9.3年 −0.3% 285.8千円(14位)
16 宿泊業,飲食サービス業 277.2千円 43.1歳 9.6年 +2.9% 269.5千円(16位)

(出典: 令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況 10ページ 第5−1表。令和6年の値と順位は令和6年賃金構造基本統計調査 結果の概況 第5−1表)

この表は賃金の高い順に並べただけで、おすすめ順ではありません。数字の差が生じた理由までは、調査からは分かりません。以下では、データで言えることだけを整理します。

上位5産業

  • 電気・ガス・熱供給・水道業(1位): 444.0千円で、平均勤続年数は17.6年と16産業の中で最も長くなっています。
  • 学術研究,専門・技術サービス業(2位): 前年は401.8千円で3位でしたが、前年比+9.6%と16産業で最大の伸びで2位に上がりました。
  • 金融業,保険業(3位): 437.0千円で、前年の2位から1つ下がっていますが、前年比は+6.4%です。
  • 情報通信業(4位): 406.0千円で、平均年齢は40.2歳と16産業で最も低くなっています。
  • 鉱業,採石業,砂利採取業(5位): 388.3千円で、前年の6位から1つ上がりました。

中位の産業(6〜11位)

  • 教育,学習支援業(6位)と建設業(7位): 379.4千円と366.3千円で、どちらも全体平均の340.6千円を上回ります。
  • 不動産業,物品賃貸業(8位): 360.1千円で、前年比−3.1%と16産業で最大の減少でした。
  • 卸売業,小売業(9位): 349.1千円で、全体平均を上回る最後の産業です。
  • 製造業(10位)と複合サービス事業(11位): 330.0千円と319.0千円で、平均勤続年数は15.3年と16.8年です。

下位の産業(12〜16位)

  • 医療,福祉(12位): 315.7千円で、平均勤続年数は9.9年です。
  • 運輸業,郵便業(13位): 312.7千円で、平均年齢は48.7歳と16産業で最も高くなっています。
  • 生活関連サービス業,娯楽業(14位)とサービス業(他に分類されないもの)(15位): 295.2千円と284.9千円で、前年は15位と14位でした。
  • 宿泊業,飲食サービス業(16位): 277.2千円で、前年も16位でした。

前年からの順位変動は1つの上下にとどまった

令和6年調査と比べると、16産業のうち8産業が同順位で、順位が動いた産業も1つ上下しただけです(編集部算出)。たとえば有給取得率の業界別ランキングでは、1年で順位が大きく動いた産業がありました。今回の2年分の比較に限っていえば、賃金の順位の動きはそれより小さい結果です。ただし2年分だけの比較なので、今後も順位が変わりにくいとまではいえません。

20代で並べると順位が入れ替わる

全年齢で1位の電気・ガスは20〜24歳では6位、全年齢で5位の鉱業は20〜24歳で1位、全年齢で10位の製造業は20〜24歳で14位と、年齢を絞ると順位が変わります。

就職してすぐに受け取るのは20代の給与ですが、全年齢の平均には50代の賃金も含まれています。そこで、20〜24歳と25〜29歳の賃金を同じ表から取り出し、20〜24歳の高い順に並べ直しました。

産業 20〜24歳(順位) 25〜29歳(順位) 全年齢の順位
鉱業,採石業,砂利採取業 285.1千円(1位) 327.0千円(2位) 5位
学術研究,専門・技術サービス業 280.1千円(2位) 335.8千円(1位) 2位
金融業,保険業 266.5千円(3位) 309.6千円(4位) 3位
情報通信業 262.2千円(4位) 308.7千円(5位) 4位
不動産業,物品賃貸業 261.7千円(5位) 298.2千円(6位) 8位
電気・ガス・熱供給・水道業 260.7千円(6位) 309.9千円(3位) 1位
建設業 250.5千円(7位) 292.8千円(7位) 7位
医療,福祉 249.0千円(8位) 277.3千円(9位) 12位
運輸業,郵便業 241.4千円(9位) 278.2千円(8位) 13位
卸売業,小売業 241.0千円(10位) 272.7千円(11位) 9位
教育,学習支援業 240.9千円(11位) 272.9千円(10位) 6位
サービス業(他に分類されないもの) 235.0千円(12位) 260.6千円(13位) 15位
生活関連サービス業,娯楽業 229.8千円(13位) 269.4千円(12位) 14位
製造業 227.1千円(14位) 259.3千円(14位) 10位
宿泊業,飲食サービス業 224.6千円(15位) 250.5千円(15位) 16位
複合サービス事業 224.2千円(16位) 247.2千円(16位) 11位

(出典: 令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況 10ページ 第5−1表の20〜24歳・25〜29歳の行。順位は編集部が並べ替え)

20〜24歳の最高と最低の差は60.9千円、25〜29歳は88.6千円(いずれも編集部算出)で、全年齢の166.8千円よりも小さくなっています。年齢を絞ると、産業間の差は小さく見えます。

読むときには、2つの点に注意が必要です。1つ目は、20〜24歳には高卒で数年勤めた人なども含まれるため、大卒新卒の初任給そのものではないことです。2つ目は、産業ごとに平均年齢や勤続年数が違うことです。表の全年齢の平均勤続年数は、電気・ガス・熱供給・水道業が17.6年、サービス業(他に分類されないもの)が9.3年と開きがあります。全年齢の平均だけでは、入社してすぐの給与は読みにくいといえます。

年齢別のピークと上がり幅

20〜24歳から賃金のピークまでの倍率は、電気・ガスの2.24倍からサービス業(他に分類されないもの)の1.33倍まで開きがあります(編集部算出)。

次の表は、70歳未満の年齢階級で最も賃金が高い階級(ピーク)と、20〜24歳に対するピークの倍率を、倍率の高い順に並べたものです。

産業 ピークの年齢階級 ピークの賃金 20〜24歳との倍率(編集部算出)
電気・ガス・熱供給・水道業 55〜59歳 583.3千円 2.24倍
金融業,保険業 50〜54歳 532.7千円 2.00倍
情報通信業 55〜59歳 516.3千円 1.97倍
教育,学習支援業 55〜59歳 473.3千円 1.96倍
学術研究,専門・技術サービス業 55〜59歳 536.7千円 1.92倍
建設業 55〜59歳 447.2千円 1.79倍
製造業 55〜59歳 399.2千円 1.76倍
卸売業,小売業 55〜59歳 423.4千円 1.76倍
鉱業,採石業,砂利採取業 40〜44歳 492.0千円 1.73倍
複合サービス事業 50〜54歳 379.7千円 1.69倍
不動産業,物品賃貸業 50〜54歳 431.1千円 1.65倍
生活関連サービス業,娯楽業 45〜49歳 338.4千円 1.47倍
宿泊業,飲食サービス業 45〜49歳 327.3千円 1.46倍
運輸業,郵便業 40〜44歳 344.6千円 1.43倍
医療,福祉 55〜59歳 347.8千円 1.40倍
サービス業(他に分類されないもの) 50〜54歳 312.8千円 1.33倍

(出典: 令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況 10ページ 第5−1表。ピークと倍率は編集部が算出)

ピークの年齢階級は、16産業のうち12産業が50代(50〜54歳または55〜59歳)です(編集部算出)。一方、鉱業,採石業,砂利採取業と運輸業,郵便業は40〜44歳、生活関連サービス業,娯楽業と宿泊業,飲食サービス業は45〜49歳がピークでした。

ここで大切な注意があります。この表は、2025年6月時点で各年齢の人を並べた「断面」です。同じ人が年齢を重ねたときの給与の伸びを追跡したものではありません。倍率が大きい産業に入れば自分の給与が同じように伸びる、ということを示す数字ではない点にご注意ください。

参考|正社員だけで並べた場合

全年齢のランキングには正社員以外も含まれますが、正社員・正職員だけで並べても、上位3産業と最下位は変わりません。

正社員・正職員(男女計)の1位は電気・ガス・熱供給・水道業の453.7千円、2位は学術研究,専門・技術サービス業の453.1千円、3位は金融業,保険業の444.8千円で、最下位は宿泊業,飲食サービス業の303.8千円です。

全年齢の順位と比べると、次の入れ替わりがあります(編集部算出)。

  • 建設業が7位から9位、不動産業,物品賃貸業が8位から7位、卸売業,小売業が9位から8位
  • 教育,学習支援業と鉱業,採石業,砂利採取業が、5位・6位で入れ替わる
  • 製造業と複合サービス事業が、10位・11位で入れ替わる

(出典: 令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況 13ページ 第6−3表)

体育会・部活動の学生が業界別データを読むときの注意

業界別の平均賃金は、統計上の「産業」の平均を月額の所定内給与で比べたもので、個別企業の給与や年収を示すものではありません。読むときの注意を3つにまとめます。

統計の「産業」と業界イメージのずれ

統計の産業区分は、学生が思い浮かべる「業界」とは一致しない場合があります。

名古屋大学フライングディスク部OBは、「理系のバックグラウンドを活かして、専門性として自分の強みになるIT技術を身につけたいと考え、コンサルティングファームのシステム職を選びました」と話しています。就職先はアビームコンサルティングで、製造業向けの基幹システム導入支援を担当しているそうです(取材記事、ツナカレメディア、2026年8月28日掲載)。

一口に「コンサル」といっても、日本標準産業分類では、経営コンサルタント業は大分類「L 学術研究,専門・技術サービス業」の中分類72(e-Stat)に含まれます。一方、受託開発ソフトウェア業は大分類「G 情報通信業」の中分類39 情報サービス業で、説明文には「顧客の委託により,電子計算機のプログラムの作成及びその作成に関して,調査,分析,助言など並びにこれらを一括して行う事業所」とあります(e-Stat)。志望企業がどの行に当たるかは事業内容によって変わるため、表を見る前に確認しておくとよいでしょう。

業界の平均は個別企業の給与ではない

同じ産業の中でも、企業規模や勤務地によって賃金が異なる場合があり、産業の平均がそのまま個別企業に当てはまるとは限りません。産業の平均順位が高くても低くても、志望企業の数字とは限りません。

また、平均の順位とは別の軸で就職先を選ぶ人もいます。同志社大学ボウリング部OBは、地元に近い場所で働きたいという思いから、信用金庫(大阪厚生信用金庫)を選んだと話しています。地域に根ざした金融機関なら活動エリアが比較的限定され、地元に近い環境で多様な業種の企業と関われると考えたそうです(取材記事、2026年8月28日掲載)。勤務地や関わる相手といった軸が、業界内の就職先を選ぶ理由になった一例です。

月額の所定内給与で比べている

この記事の数字には、残業代(時間外勤務手当・休日出勤手当など超過労働給与額)と賞与の差が含まれていません。年収で比べたい場合は、個別企業の募集要項にある「賞与」「モデル年収」などの記載を確認する方法があります。表の数字を12倍して年収とみなすことは避けてください。

業界を絞ったあとに個別企業で確認したいこと

業界のデータで候補を絞ったら、志望企業の募集要項や説明会で、給与の中身を確認するのが次の一手になります。

確認項目 確認できる場所 質問例
初任給と固定残業代の有無 募集要項、説明会 「初任給に固定残業代は含まれますか」
賞与の支給実績 募集要項、説明会 「直近の賞与の支給実績を教えてください」
20代の昇給の仕組み 説明会、OB・OG訪問 「20代のうちは、どのように給与が上がりますか」
勤務地と転勤の有無 募集要項、説明会 「入社後の勤務地は選べますか。転勤はありますか」
社会人で競技を続けられるか OB・OG訪問 「平日の勤務時間や休日は、競技の練習と両立できていますか」

業界研究の進め方は業界研究のポイント(ツナカレメディア)も参考になります。給与のほかに何を軸にするかは、就活の軸の決め方(体育会向け)で整理しています。

まとめ

全年齢では電気・ガス・熱供給・水道業の444.0千円が最も高く、宿泊業,飲食サービス業の277.2千円が最も低い結果でした。ただし、20代に絞ると順位は入れ替わり、年齢別のピークや上がり幅も産業によって違います。数字は月額の所定内給与で、年収ではありません。産業単位の平均値のため、業界を絞る段階の参考にとどめ、個別企業は募集要項や説明会で確認するのが現実的です。

業界ごとの向き不向きは体育会に向いている業界、離職率など他の業界データの読み方は新卒の離職率データの読み方でも扱っています。

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