社会人になっても競技を続けたい、週末の予定を確保したいといった理由で、働き方や休み方を気にする人がいます。この記事では、厚生労働省の公的統計をもとに、16産業の有給休暇の取得率を表で並べました。前年調査との順位の比較、取得率と取得日数の違い、数字を就活で読むときの注意点まで扱います。ランキングは休みやすさを保証するものではなく、業界を知る入口として使うための整理です。

この記事の数字の出どころとランキングの作り方

順位はすべて厚生労働省「就労条件総合調査」の公表値をそのまま並べたもので、編集部の独自アンケートや評価は入れていません。線引きは次の4点です。

  • 令和7年調査(2024年1年間の実績)の第5表を、取得率の高い順に並べただけです。
  • 前年との比較には、令和6年調査(2023年実績)の第5表を使っています。
  • 企業別のランキングや口コミサイトの数値は扱いません。
  • 体育会出身者に限定した産業別の取得率データは、制作時に確認した範囲では見当たりませんでした。

調査の概要は次のとおりです。

項目 内容
調査名 令和7年就労条件総合調査
実施主体 厚生労働省
調査対象 日本標準産業分類に基づく16大産業で、常用労働者30人以上の民営企業
集計対象の労働者 期間を定めずに雇われている労働者(パートタイム労働者を除く)
調査時点 2025年1月1日現在(年間の数値は2024年又は2023会計年度の1年間)
調査客体数・有効回答数 6,448・3,820(有効回答率59.2%)
公表日 2025年12月19日

(出典: 厚生労働省「令和7年就労条件総合調査 結果の概況」、調査概要PDF 1ページ)

結論|有給取得率が最も高いのは電気・ガス業の75.2%、最も低いのは宿泊・飲食の50.7%

2024年の全体平均は66.9%で、16産業のうち最高の75.2%と最低の50.7%の間には24.5ポイント(編集部算出)の開きがあります。

全体の数字は次のとおりです。

項目 令和7年調査(2024年実績) 令和6年調査(2023年実績)
付与日数 18.1日 16.9日
取得日数 12.1日 11.0日
取得率 66.9% 65.3%

取得日数・取得率とも、昭和59(1984)年以降で最も高い水準です。ここでの取得率は「取得日数計÷付与日数計×100」で計算されており、付与日数には繰越日数を含みません。

(出典: 令和7年調査 結果の概要 8ページ、令和6年調査 8ページ)

有給取得率の業界別ランキング(16産業・令和7年調査)

上位は電気・ガス、鉱業、製造業・金融業,保険業(同率)と続き、下位には宿泊業,飲食サービス業、複合サービス事業、生活関連サービス業,娯楽業が並びます。同率は同順位で、3位が2つあるため次は5位です。

順位 産業 取得率 付与日数 取得日数
1 電気・ガス・熱供給・水道業 75.2% 19.5日 14.7日
2 鉱業,採石業,砂利採取業 74.3% 18.2日 13.5日
3 製造業 72.8% 18.8日 13.7日
3 金融業,保険業 72.8% 19.6日 14.3日
5 サービス業(他に分類されないもの) 69.7% 16.4日 11.4日
6 医療,福祉 68.4% 17.7日 12.1日
7 情報通信業 66.9% 18.9日 12.7日
8 学術研究,専門・技術サービス業 66.8% 18.4日 12.3日
9 不動産業,物品賃貸業 65.5% 17.8日 11.6日
10 運輸業,郵便業 65.3% 17.4日 11.4日
11 建設業 60.7% 18.3日 11.1日
12 教育,学習支援業 60.5% 18.3日 11.1日
13 卸売業,小売業 59.9% 17.5日 10.5日
14 生活関連サービス業,娯楽業 59.6% 17.7日 10.6日
15 複合サービス事業 57.1% 19.7日 11.2日
16 宿泊業,飲食サービス業 50.7% 15.9日 8.0日

(出典: 令和7年調査 結果の概要 8ページ)

この表は取得率の高い順に並べただけで、おすすめ順や働きやすさの保証を示すものではありません。なお、調査からは数字の差が生じた理由までは分かりません。以下では、データで言える範囲だけを解説します。

上位5産業

  • 電気・ガス・熱供給・水道業(1位): 取得率75.2%、取得日数14.7日はいずれも16産業で最も高い数字です。
  • 鉱業,採石業,砂利採取業(2位): 取得率は74.3%で、付与18.2日に対して13.5日を取得しています。
  • 製造業(3位): 取得率72.8%、取得日数13.7日です。
  • 金融業,保険業(3位): 取得率は製造業と同じ72.8%です。付与日数は19.6日と多く、取得日数も14.3日で電気・ガスに次ぐ2番目です。
  • サービス業(他に分類されないもの)(5位): 取得率は69.7%、付与日数は16.4日です。

中位の産業

  • 医療,福祉(6位): 取得率68.4%で、取得日数は12.1日と全体平均と同じです。
  • 情報通信業(7位): 取得率は66.9%で全体平均と同じで、付与日数は18.9日です。
  • 学術研究,専門・技術サービス業(8位)と不動産業,物品賃貸業(9位): 取得率は66.8%と65.5%で、いずれも全体平均の66.9%をわずかに下回ります。不動産業,物品賃貸業は前年調査から3.1ポイント上がっています(編集部算出)。
  • 運輸業,郵便業(10位): 取得率65.3%で、取得日数は11.4日です。

下位の産業

  • 建設業(11位)と教育,学習支援業(12位): 取得率は60.7%と60.5%で、どちらも付与18.3日・取得11.1日です。
  • 卸売業,小売業(13位)と生活関連サービス業,娯楽業(14位): 取得率は59.9%と59.6%で、取得日数は10.5日と10.6日です。
  • 複合サービス事業(15位): 付与日数19.7日は16産業で最多ですが、取得率は57.1%にとどまります。
  • 宿泊業,飲食サービス業(16位): 取得率50.7%で、付与日数15.9日・取得日数8.0日はどちらも16産業で最少です。

前年からの順位変動|1年で5つ順位を上げた産業もある

令和6年調査と並べると順位が大きく動いた産業があり、単年の順位だけで業界を判断しにくいことが分かります。

産業 令和6年調査 令和7年調査 差(編集部算出)
電気・ガス・熱供給・水道業 70.7%(3位) 75.2%(1位) +4.5pt
鉱業,採石業,砂利採取業 71.5%(1位) 74.3%(2位) +2.8pt
製造業 70.4%(4位) 72.8%(3位タイ) +2.4pt
金融業,保険業 65.4%(8位) 72.8%(3位タイ) +7.4pt
サービス業(他に分類されないもの) 71.1%(2位) 69.7%(5位) −1.4pt
医療,福祉 66.8%(6位) 68.4%(6位) +1.6pt
情報通信業 67.1%(5位) 66.9%(7位) −0.2pt
学術研究,専門・技術サービス業 65.7%(7位) 66.8%(8位) +1.1pt
不動産業,物品賃貸業 62.4%(10位) 65.5%(9位) +3.1pt
運輸業,郵便業 62.2%(11位) 65.3%(10位) +3.1pt
建設業 60.7%(12位) 60.7%(11位) ±0.0pt
教育,学習支援業 56.9%(14位) 60.5%(12位) +3.6pt
卸売業,小売業 60.6%(13位) 59.9%(13位) −0.7pt
生活関連サービス業,娯楽業 63.2%(9位) 59.6%(14位) −3.6pt
複合サービス事業 55.0%(15位) 57.1%(15位) +2.1pt
宿泊業,飲食サービス業 51.0%(16位) 50.7%(16位) −0.3pt

(出典: 令和7年調査 8ページ、令和6年調査 8ページ。差は両調査の取得率から編集部が算出)

注目点は次のとおりです。

  • 金融業,保険業: 65.4%(8位)から72.8%(3位タイ)へ、+7.4ポイントと最も大きく上がりました。順位は5つ上がっています。付与日数も15.1日から19.6日に増えています。
  • 生活関連サービス業,娯楽業: 63.2%(9位)から59.6%(14位)へ、−3.6ポイントと最も大きく下がりました。
  • 上位の入れ替わり: 鉱業は1位から2位、サービス業(他に分類されないもの)は2位から5位に動いています。
  • 変わらない産業: 宿泊業,飲食サービス業は2年続けて16位で、建設業は2年とも60.7%です。

変動の理由は、調査からは分かりません。この調査は、産業・企業規模別に層化して無作為に抽出した企業を対象にした標本調査です(調査概要PDF 1ページ)。1年分の変動だけを見て、その産業の休み方が変わったと読むのは控えたほうがよいでしょう。

取得率と取得日数では順位が入れ替わる

取得率は「付与された日数のうち何割を使ったか」を示す数字なので、実際に休んだ日数の多さとは順位が一致しない産業があります。

  • 複合サービス事業: 付与日数は19.7日で16産業最多ですが、取得日数は11.2日、取得率は57.1%で15位です。取得日数で並べると11位になります。
  • サービス業(他に分類されないもの): 取得率は69.7%で5位ですが、付与16.4日・取得11.4日で、取得日数では9位です(運輸業,郵便業と同数)。
  • 電気・ガス・熱供給・水道業と金融業,保険業: 取得日数でも電気・ガスが14.7日で1位、金融業,保険業が14.3日で2位です。

「何日くらい休めそうか」を知りたい場合は、取得率だけでなく取得日数も併せて見るとよいでしょう。

(出典: 令和7年調査 8ページ。取得日数の順位は編集部が並べ替えたもの)

参考|週所定労働時間の業界差(同じ調査の第1表)

週の所定労働時間は1企業平均で39時間24分(前年は39時間23分)です。産業別では、金融業,保険業の38時間12分が最も短く、宿泊業,飲食サービス業の40時間02分が最も長くなっています。1日の所定労働時間の全体平均は7時間49分です。

区分 産業 週所定労働時間
短い順1位 金融業,保険業 38時間12分
短い順2位 学術研究,専門・技術サービス業 38時間25分
短い順3位 複合サービス事業 38時間34分
長い順1位 宿泊業,飲食サービス業 40時間02分
長い順2位 鉱業,採石業,砂利採取業 39時間55分
長い順3位 運輸業,郵便業 39時間44分

所定労働時間は就業規則などで定められた時間で、残業(所定外労働)は含まれません。

(出典: 令和7年調査 結果の概要 5ページ)

体育会・部活動の学生が業界別データを読むときの4つの注意

統計の「産業」は学生が思い浮かべる「業界」と一致しないことがあり、数字は平均値で、調査対象にも範囲があります。そのため、業界を絞る段階の参考として使うのが現実的です。

1. 産業区分と業界イメージのずれ

新潟大学アイスホッケー部OBは、電力や通信といったインフラ設備は今後も社会に欠かせない領域だと考え、安定性と社会貢献性を重視して古河電気工業を選んだと話しています。現在は、特別高圧電力を送るケーブルの販売と施工の取りまとめを担当しているそうです(取材記事、ツナカレメディア、2026年8月28日掲載)。同OBは今も社会人のクラブチームでアイスホッケーを続けていると話しており、社会人で競技を続ける形の一例といえます。

一方、電線・ケーブル製造業は、日本標準産業分類では大分類「E 製造業」の中分類23「非鉄金属製造業」に含まれます(e-Stat 日本標準産業分類)。「インフラにかかわる仕事」であっても、統計の表で見るべき行が「電気・ガス・熱供給・水道業」とは限りません。志望企業がどの産業に分類されるかは、先に確認しておくとよいでしょう。

2. 平均値であること

同じ産業の中でも、企業によって状況は異なります。企業規模別の取得率は、次のとおりです。

企業規模 取得率
1,000人以上 69.0%
300〜999人 66.8%
100〜299人 65.5%
30〜99人 64.9%

(出典: 令和7年調査 結果の概要 8ページ)

産業の平均値がそのまま志望企業に当てはまるとは限りません。

3. 調査対象の範囲

調査の対象は常用労働者30人以上の民営企業で、集計されているのは期間の定めのない労働者(パートタイム労働者を除く)です。公務員や、常用労働者が30人未満の企業の数字は含まれていません。

4. 新卒1年目の扱い

厚生労働省の案内では、雇われた日から6カ月間継続して勤務し、全労働日の8割以上出勤していれば、10日間の年次有給休暇が付与されます。また2019年4月から、法定の年休付与日数が10日以上の全ての従業員に、年5日の取得を確実にさせることが使用者に求められています。付与日数は、勤続年数や週所定労働日数などによって異なります。

(出典: 厚生労働省「10月は『年次有給休暇取得促進期間』です」)

本記事の付与日数の平均18.1日は、勤続年数の長い人を含む全体の平均で、新卒1年目に付与される日数を示すものではありません。

競技を続けたい人は、休み方以外の選択肢も

競技と仕事の組み合わせ方は、休日の多さだけで決まるものではありません。立教大学ボート部OBは、実業団(病院)に所属し、入職当初は朝5時から練習したうえで、8時半から夕方までフルタイムで働いていたと話しています。仕事後に自主練習をする選手がほとんどのチームだったそうです。結果を出して全員が強化指定選手になってからは、午後1時まで働き、その後に練習へ向かう形に変わったといいます。そうした生活を6年間続けたとのことです(取材記事、2026年6月25日掲載)。

取材した個人の例であり、すべての職場に当てはまるとは限りません。競技と仕事の組み合わせ方には、勤務時間の組み方など複数の形があることが分かります。

業界を絞ったあとに個別企業で確認したいこと

業界データで候補を絞ったら、志望企業の取得実績を採用ページや説明会で確認するのが次の一手になります。

確認項目 確認できる場所 質問例
有給の平均取得日数・取得率 採用ページ、説明会、OB・OG訪問 「直近の平均取得日数はどのくらいですか」
入社1年目の付与時期 就業規則、募集要項、説明会 「入社後、有給はいつから使えますか」
年間休日と週休制 募集要項、採用ページ 「完全週休2日制ですか」
土日の勤務の有無 説明会、OB・OG訪問 「土日に出勤する機会はありますか」
計画的付与の制度 就業規則、説明会 「会社が日を決めて取得する制度はありますか」

社会人になっても週末にクラブチームや大会に出たい場合は、土日の勤務の有無を自分の予定と重ねて確認しておくと判断しやすくなります。計画的付与制度がある企業は全企業の40.8%(令和7年調査 結果の概要 9ページ)で、制度の有無は企業によって異なります。

業界研究の進め方は業界研究のポイント(ツナカレメディア)も参考になります。離職率など他の業界データの読み方は、新卒の離職率データの読み方で整理しています。

まとめ

2024年の有給取得率は全体で66.9%、産業別では電気・ガス・熱供給・水道業の75.2%から宿泊業,飲食サービス業の50.7%まで24.5ポイント(編集部算出)の幅がありました。ただし前年と比べると順位が大きく動いた産業もあり、取得率と取得日数でも順位は入れ替わります。数字は産業単位の平均値のため、業界を絞る段階の参考にとどめ、個別の企業は採用ページや説明会で確認するのが現実的です。休み方は業界選びの軸の1つにすぎません。

軸の整理は就活の軸の決め方(体育会向け)、業界ごとの向き不向きは体育会に向いている業界も合わせて読んでみてください。

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