「部の先輩に紹介してもらった会社から内定をもらったけれど、別の会社に行きたい」「先輩にどう言えばいいのか分からず、企業への連絡も後回しにしている」。体育会の学生には、こうした気まずさを抱えて動けなくなる場面があります。
結論から言うと、内定の辞退そのものは就活生の権利とされています。そのうえで、紹介者がいる場合は「誰に・どの順番で・何を伝えるか」を先に決めておくと、気まずさを抑えやすくなります。 この記事では、体育会ならではの人間関係(先輩の紹介、監督や部の推薦、同じ会社にいる先輩)を前提に、連絡の順番と例文を整理します。
なお、本記事は「内定を受けたあとの辞退」を扱います。選考の途中で断る場合は選考辞退メールの書き方、返事を待ってもらう場合は複数内定の保留マナー、承諾の時期を考えたい場合は内定承諾は早めに決めるか待つかをご覧ください。どの会社を選ぶべきか、という判断自体は扱いません。
内定辞退は権利とされている。ただし伝え方には配慮が要る
結論として、辞退できるかどうかと、先輩や部との関係をこじらせない伝え方ができるかどうかは、別の問題です。 前者は公的な資料や解説で整理されており、後者は自分の動き方で左右される部分が大きくなります。
まず前者です。内閣官房の学生向け資料(2026年度卒用)には、「内々定・内定の辞退は、就活生の正当な権利です」という趣旨の記載があります(出典: 内閣官房「これから就職活動を行う学生の皆さんに知っていただきたいこと」)。ワンキャリアの解説は、民法627条を踏まえて「法律上、内定辞退は入社の2週間前まで可能」としつつ、実務上は内定式前までの連絡が理想とされると説明しています(出典: ワンキャリア「内定辞退はいつまで可能?」)。
時期の目安については、キャリタス就活の解説が、回答期限があるなら期限内、期限がなければ「内定通知を受け取ってから1週間以内が理想」としています(出典: キャリタス就活「内定辞退の伝え方のマナー」)。いずれも一般的な目安で、企業の就業規則や個別の書面を置き換えるものではありません。
後者の「伝え方」に配慮が要るのは、企業の人事担当者だけでなく、紹介者である先輩、部の主将や監督といった人間関係が同時に動くためです。
気まずさを3つに分けると、確認する相手が整理しやすい
結論として、気まずさは「紹介者への申し訳なさ」「部としての関係」「推薦ルートの取り扱い」の3つに分けて考えると、確認すべき相手がはっきりします。
| 気まずさの種類 |
具体的な場面 |
先に確認すること |
| 紹介者への申し訳なさ |
先輩が人事に話を通してくれた、面談を設定してくれた |
紹介の経緯と、先輩が企業にどこまで話しているか |
| 部としての関係 |
同じ会社に部の先輩が複数いる、毎年その会社から説明会に来る |
主将やOB会の窓口に、報告の要否と共有の範囲を相談する |
| 推薦ルートの取り扱い |
大学の推薦、指定校、監督を通した推薦で受けた |
大学のキャリアセンターに、推薦の扱いを確認する |
「辞退すると、後輩の採用に影響が出るのではないか」と心配する人もいるかもしれません。ただ、この点を一般論として示せる公的なデータは確認できていません。企業や部によって事情が異なるため、主将やOB会の窓口、大学のキャリアセンターに個別に聞いて確かめるのが確実です。
就活情報サイトの解説では、推薦での内定辞退について、大学への影響や企業と大学の信頼関係に関わる点が整理されています(出典: クレクスグループ「推薦状で内定承諾後に辞退は可能?」)。監督や部を通した推薦も、形式は大学の推薦と異なる場合がありますが、第三者の信頼が絡む点は近いため、編集部としては、同じ慎重さで動くのが安全だと考えます。
先輩のつながりが就活の入口になることは実際にある
先輩とのつながりが就活の入口になる例は、取材記事にも出てきます。一橋大学アメリカンフットボール部のOBは、就活に十分向き合えないまま地元企業を中心に受けていたところ、電力会社を受けていた際に、部の先輩からほかの電力会社も受けてみてはと声をかけられたと話しています。最終的には、声をかけてくれた先輩が勤める会社に入社したということです(2026年8月28日掲載、出典: ツナカレメディア OBOGインタビュー)。
また、東京学芸大学蹴球部のOBは、取材で「これまでのキャリアを振り返ると、履歴書を送って就職したケースよりも、人の紹介で仕事につながったケースが多くあります」と語っています(2026年3月24日掲載、出典: ツナカレメディア OBOGインタビュー)。
いずれも取材した個人の例で、体育会の学生全般に当てはまるわけではありません。ただ、先輩とのつながりでできた縁は就職後も続くことがあるため、辞退のときにも、連絡を丁寧にして関係を保っておく価値はあると考えられます。このあたりの紹介の仕組みは、コネ入社は体育会に本当にあるの?でも整理しています。
連絡の順番:紹介者→企業→部を基本に考える
結論として、紹介者がいる場合は、企業に連絡する前に紹介者へ一報を入れ、企業への連絡を済ませたあとで、主将や監督に報告する順番が、誤解を生みにくいと考えられます。企業の人事から紹介者に連絡が行く場面があり、先に本人から伝えておいたほうが、紹介者が知らない状態で聞くことを避けられるためです。
これは編集部の考えで、部や企業の慣習によって適切な順番は変わります。迷うときは、主将やOB会の窓口、キャリアセンターに相談してください。
| 順番 |
誰に |
手段の目安 |
ポイント |
| 1 |
自分の中で |
紙に書く |
辞退の意思、回答期限、承諾書の提出有無、理由を一文で言えるようにする |
| 2 |
紹介者(先輩・OB・監督) |
対面か電話。難しければ「お話ししたいことがある」と先に連絡 |
企業に連絡する前日〜当日までに。結論を先に、お礼と謝罪を添える |
| 3 |
企業の人事担当者 |
電話のあとにメール |
営業時間内に電話し、不在ならメールを送る |
| 4 |
主将・監督・OB会の窓口 |
対面か電話 |
企業へ伝えたあとに、部内の共有の範囲を相談する |
| 5 |
紹介者(結果の報告) |
メッセージなど |
企業に伝えたことと、改めてのお礼を送る |
部内の連絡グループに、内定先や辞退の事実を先に書き込むと、紹介者や主将より先に周囲に伝わる可能性があります。順番を乱さないために、部内への共有は、紹介者と企業への連絡が終わってからにするほうが無難です。
企業への連絡:電話で伝え、メールで形に残す
結論として、企業への連絡は電話を基本にして、そのあとにメールで内容を残す形が、キャリタス就活とワンキャリアの解説で示されています。キャリタス就活の解説は、基本は電話で連絡し、不在の場合はメールで連絡するとし、電話のあとに形として残すためにメールを送ることを勧めています。ワンキャリアの解説は、電話なら相手の反応を確認しながら確実に意思を伝えられるうえ、企業側も状況を把握しやすいと説明しています。
練習や試合の時間帯は電話に出られない場合が多いので、電話をかける時間と、折り返しの連絡を受ける時間帯を先に決めておくと動きやすくなります。かける時間帯は、練習の合間ではなく、落ち着いて話せる時間を選んでください。企業から不在着信があったときの動き方は、選考辞退メールの書き方の「練習中・試合中に企業から連絡が来たとき」の節と共通します。
理由については、ワンキャリアの解説に「よくある理由と伝え方」の章があり、理由の例文が掲載されています。編集部の考えとして、理由は細かく書かず、他社の社名や内定先も出さないほうが無難です。比較された印象を与えやすいためで、「慎重に検討を重ねた結果」といった表現にとどめる方法があります。
例文3選(編集部作成・架空)
以下は書き方を示すための架空の例文です。〇〇の部分は自分の情報に置き換えてください。
例文1 紹介者(部の先輩)への連絡
〇〇先輩
お疲れさまです。〇〇大学〇〇部の〇〇です。
〇〇社の件で、お時間のあるときにお電話でお話ししたいことがあります。いつ頃でしたらご都合よろしいでしょうか。
(通話で)
先日は〇〇社のご紹介と、面談の調整までしていただき、本当にありがとうございました。悩んだ末、今回は内定を辞退させていただくことにしました。ご紹介いただいたのに申し訳ありません。本日〇時に、人事の方へ電話でお伝えします。
ポイント: メッセージでは詳細を書かず、通話の約束だけ取ります。紹介へのお礼を先に伝え、そのあとに結論を言います。企業への連絡時刻を伝えておくと、先輩も状況を把握できます。
例文2 企業の人事担当者へのメール(電話のあと)
件名:【内定辞退のご連絡】〇〇大学 〇〇〇〇
株式会社〇〇
人事部 採用ご担当 〇〇様
お世話になっております。〇〇大学〇〇学部の〇〇〇〇です。
先ほどお電話でもお伝えしましたが、慎重に検討を重ねた結果、内定を辞退させていただきたく、改めてご連絡いたしました。
〇〇様(〇〇部OB)のご紹介も含め、選考の過程で多くの方にお時間をいただきましたこと、心より御礼申し上げます。ご期待に沿えず、誠に申し訳ございません。
末筆ながら、貴社のますますのご発展をお祈りいたします。
〇〇大学〇〇学部〇〇学科
〇〇〇〇
電話番号/メールアドレス
ポイント: 電話の内容を確認する形で書きます。紹介者の名前を出す場合は、先に紹介者へ連絡を済ませてからにします。
例文3 主将・監督への報告
〇〇主将(〇〇監督)
お疲れさまです。〇〇です。
内定をいただいていた〇〇社について、検討の結果、辞退することにしました。紹介してくださった〇〇先輩には先日お伝えし、企業にも本日連絡を済ませています。
部や後輩に関わる点があれば、教えてください。部内への共有は、主将のご判断に従います。
ポイント: すでに連絡を終えたことを先に伝えます。部内への共有範囲は主将に委ねる形にすると、部の慣習にも合わせやすくなります。
避けたい5つの行動
結論として、避けたいのは、紹介者に伝達を任せること、連絡を先延ばしにすること、連絡の順番を乱すことです。具体的には次の5つに整理できます。
| 避けたいこと |
起こりうること(編集部の整理) |
代わりに |
| 先輩経由で企業に伝えてもらう |
紹介者に負担をかけ、本人の意思が企業に正確に伝わりにくい |
自分で企業に電話とメールで伝える |
| 連絡を先延ばしにする |
企業側の準備が進み、伝えづらくなる場合がある |
決めた時点で紹介者へ、翌営業日までに企業へ |
| 部の連絡グループに先に書く |
紹介者より先に周囲に伝わる |
紹介者と企業への連絡のあとに共有 |
| 理由に他社名や不満を書く |
比較された印象や、後味の悪さが残る |
「慎重に検討した結果」にとどめる |
| 返信が来ないことを理由に放置する |
辞退が伝わったか不明確なまま残る |
電話とメールの両方で、日時を残しておく |
引き止められたとき・圧力を感じたとき
辞退を伝えたあと、企業や周囲から強く引き止められることがあります。内閣官房の学生向け資料は、内定を出す条件に他社の就活を終えるよう求めるいわゆる「オワハラ」を、職業選択の自由を侵害するおそれがある許されない行為と位置づけています。そのうえで、一人で抱え込まず、都道府県労働局、新卒応援ハローワーク、大学のキャリアセンターに相談するよう促しています(同資料)。
紹介者である先輩からの引き止めは、善意からの言葉である場合もあります。その場合は、感謝を伝えたうえで、「自分で考えて決めたこと」を落ち着いて繰り返す形が基本です。それでも悩むときは、キャリアセンターなど第三者に話を整理してもらうと、判断を取り戻しやすくなります。
まとめ 感謝を先に、順番を守って、短く伝える
内定辞退のポイントは、次の4つに整理できます。
- 辞退は就活生の権利とされているが、伝え方は先輩や部との関係に影響する
- 紹介者がいる場合は、企業より先に紹介者へ一報を入れる順番を基本に考える
- 企業へは電話で伝え、メールで内容を残す。時間帯は練習と重ならないようにする
- 部内への共有は、紹介者と企業への連絡が終わってから、主将と相談して進める
どう伝えるかを一人で決めにくいときは、ツナカレ就活への登録から相談できます。ご相談にはメールで回答します。ガクチカの材料を整理したい方は、体育会・学生団体のガクチカ 書き方テンプレ&例文集を無料で配布しています。