「運動部に入りながら、別の部やサークルにも入っていた。この経験を、志望動機でどう使えばいいのだろう」。ガクチカなら「何をしたか」を書けば形になりますが、志望動機は「なぜこの会社か」まで語る必要があるため、兼部の経験をどこに置くか迷う場合があります。
結論から言うと、兼部の経験は、志望動機の「主役」ではなく「根拠」として使うと整理しやすくなります。 主役は「その会社を選ぶ理由」です。兼部で得た気づきが、その理由を裏付けるときに、はじめて強い材料になります。この記事では、兼部の経験を志望動機に組み込む3つの型と、編集部が作成した架空の例文3選、弱くなりやすい書き方を紹介します。
なお、この記事でいう「兼部」は、運動部に所属しながら、別の部・サークル・学生団体にも同時期に所属していたケースを指します。複数団体を就活全体でどう整理して伝えるかは学生団体の掛け持ちは就活でどう伝える?、ガクチカに使う経験の選び方はガクチカが複数ある場合の選び方で扱っています。この記事は、志望動機という設問に絞ります。
志望動機で兼部の経験をどう位置づけるか
志望動機は「なぜその会社か」を答える設問です。兼部の経験は、その答えを支える根拠の1つとして使うのが基本の位置づけです。
ガクチカと志望動機では、同じ経験を使っても問われていることが異なります。
| 設問 | 問われていること | 兼部の経験の使い方 |
|---|---|---|
| ガクチカ | 何に取り組み、どう動き、何を得たか | 2つの環境での役割や工夫を具体的に話す |
| 志望動機 | なぜこの会社・この仕事を選ぶのか | 2つの環境で気づいた「大事にしたいこと」を、会社を選ぶ理由の根拠にする |
たとえば、ガクチカでは「運営でどう動いたか」を詳しく書き、志望動機ではそこから得た気づき(例: 現場の声を聞いて仕組みを変えるのが好き)だけを取り出し、会社の特徴につなげます。
志望動機の基本の組み立ては、体育会学生の志望動機例文3選でも扱っています。この記事は、その土台のうえで「兼部ならではの使い方」に絞った内容です。
兼部の経験を志望動機に使う3つの型
兼部の経験は、「共通点」「対比」「両立」の3つの型に分けて考えると、志望動機との接点を見つけやすくなります。
| 型 | 考え方 | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 共通点型 | 2つの環境で共通して大事にしたことを取り出す | どちらでも似た役割や工夫をしていた | 「どちらも頑張った」で終わらせず、共通する価値観を言葉にする |
| 対比型 | 2つの環境の違いから、自分が力を出しやすい環境に気づく | 2つの環境で、役割や雰囲気が大きく違った | どちらかを下げる書き方にしない |
| 両立型 | 両立の工夫を、入社後の働き方の根拠にする | 時間の使い方や優先順位づけに工夫があった | 志望理由の核にはなりにくいため、補強として使う |
共通点型
2つの環境に共通する、自分の行動の傾向を取り出す型です。「どちらの場でも、メンバーの意見を聞いてから動いていた」「どちらでも、仕組みを整える役割に回っていた」のように、行動の共通点から価値観を導き出します。 複数の環境で見られる共通点は、自分の軸として説明しやすい場合があります。
対比型
2つの環境の違いを使う型です。「自分はどちらの環境で力を出しやすかったか」を振り返り、志望する会社の働き方との接点を探します。注意したいのは、どちらかの環境を下げるような書き方にしないことです。
両立型
時間の使い方や優先順位づけの工夫を、仕事の進め方の根拠にする型です。ただし、両立できたこと自体は「その会社を選ぶ理由」にはなりにくいため、共通点型や対比型の補強として使うほうが整理しやすくなります。
兼部の志望動機の組み立て方(4ステップ)
志望動機は「結論→兼部での事実→会社の特徴との接点→入社後」の順で組み立てると、兼部の経験が根拠として機能しやすくなります。
- 結論(志望理由): 何をしたいから、この会社を志望するのかを1文で書く
- 兼部での事実: その志望理由につながる、2つの環境での行動や気づきを書く
- 会社の特徴との接点: その会社のどこが、自分の大事にしたいことと合うのかを書く(企業研究が必要な部分)
- 入社後: 入社後に、その大事にしたいことをどう仕事で出したいかを書く
書くときの空欄つきの型を、次に示します。
私が貴社を志望する理由は、( 志望理由 )ためです。( 運動部 )と( もう一つの環境 )の両方で、( 共通する行動・気づき )という経験を通じて、( 大事にしたいこと )を重視するようになりました。貴社は( 会社の具体的な特徴 )という点で、この考えを実現できると考えています。入社後は( 具体的な仕事のイメージ )に取り組みたいと考えています。
「会社の特徴」は、採用ページや説明会、OB・OG訪問などで確認した事実から書きます。ここが曖昧だと、他の会社にも当てはまる志望動機に見えやすくなります。
兼部の志望動機の例文3選
以下は、編集部が作成した架空の例文です。特定の人物や企業の実例ではありません。競技や団体名、会社の特徴は、自分の事実に置き換えて使ってください。
例文1: 共通点型(運動部と地域活動の団体)
私が貴社を志望する理由は、現場の声を集めて仕組みに反映する仕事に携わりたいためです。私は運動部と、地域の清掃活動を行う学生団体の両方に所属していました。どちらでも、メンバーが言いにくい不満や困りごとを個別に聞いたうえで、活動の進め方を変える役割を担いました。この経験から、現場の小さな声を拾い、仕組みに反映することにやりがいを感じると気づきました。貴社は、販売店の担当者へのヒアリングを製品改善に反映する取り組みを採用ページで紹介しており、この考えを実現できる環境だと考えています。入社後は、販売店の声を集めて改善提案につなげる業務に取り組みたいと考えています。
ポイント: 2つの環境の「共通する行動」から価値観を導き、会社の特徴(ヒアリングを製品改善に反映する取り組み)と接続しています。会社の特徴は、実在企業の事実ではなく、あくまで例文用の想定です。
例文2: 対比型(運動部と音楽系サークル)
私が貴社を志望する理由は、個人の成果とチームの成果の両方が評価される環境で働きたいためです。私は運動部の選手として、結果が数字で見える環境で努力する面白さを知りました。一方で、並行して所属していた音楽系サークルでは、全員の意見をすり合わせて一つの演奏をつくる過程に力を注ぎました。2つの環境を経験して、自分は個人の目標に向き合う時間と、仲間と合意をつくる時間の両方があると力を出しやすいと気づきました。貴社は、個人の目標を持ちながらチームで案件を進める営業体制を紹介しており、この働き方に魅力を感じています。入社後は、個人の目標と、チームでの情報共有の両方に力を入れて取り組みたいと考えています。
ポイント: どちらの環境も否定せず、「自分が力を出しやすい条件」を言葉にしています。会社の営業体制は例文用の想定です。「合う」と断定せず、自分の気づきとして書いている点に注目してください。
例文3: 共通点型+両立型(運動部と文化系サークル)
私が貴社を志望する理由は、複数の案件を並行して進めながら、一つひとつの質を保つ仕事がしたいためです。私は運動部の活動と、写真サークルの展示企画を並行して行いました。大会前と展示前の時期が重なった際は、先に全員の予定を書き出し、準備を前倒しする日を決めて動きました。この経験から、複数の予定を見通して優先順位を整理することが、自分の得意な進め方だと気づきました。貴社は、一人が複数の顧客を担当するスタイルを説明会で紹介しており、この進め方を活かせる環境だと考えています。入社後は、複数の案件の進捗を整理しながら、顧客への対応の質を保つことに取り組みたいと考えています。
ポイント: 両立の工夫を、会社の働き方(複数案件の並行)の根拠として使っています。両立型は単独では志望理由の核になりにくいため、「複数案件の質を保ちたい」という志望理由に直接つなげる形にしています。
兼部の志望動機で弱くなりやすい書き方
兼部の経験は、書き方次第で「経験の羅列」に見えやすくなります。次の表で、弱くなりやすい書き方と見直しの方向性を確認してください。
| 弱くなりやすい書き方 | 起こりやすい問題 | 見直しの方向性 |
|---|---|---|
| 「2つの活動を頑張ったので、体力に自信があります」 | 会社を選ぶ理由とつながらない | 体力ではなく、そこで得た気づきを理由につなげる |
| 運動部とサークルの活動内容を順に説明する | ガクチカとの区別がつかなくなる | 気づきだけを取り出し、会社の特徴につなげる |
| 「兼部していたので、何でもこなせます」 | 根拠のない一般化に見える | 具体的な行動と、そこからわかった自分の傾向だけを書く |
| どちらかの環境の悪口になる | 聞き手に不要な印象を与える場合がある | 違いは事実で述べ、優劣はつけない |
| 兼部の理由が後付けに感じられる | 面接で深掘りされたとき答えにくい | 兼部を始めた当時の理由を事実で確認しておく |
特に1つめの「体力に自信がある」型は、体力そのものが会社を選ぶ理由になりにくい点に注意が必要です。
面接で聞かれる場合がある深掘りと、答え方の軸
志望動機に兼部を入れた場合、面接では次のような質問をされる場合があります。事前に事実を確認しておくと、落ち着いて答えやすくなります。
| 質問の例 | 答えるときの軸 |
|---|---|
| なぜ兼部を選んだのですか | 始めた当時の理由を、事実のまま簡潔に答える |
| 両方を続けるうえで、何を優先しましたか | 優先順位の決め方と、実際に調整した場面を具体的に答える |
| どちらの環境が自分に合っていましたか | 優劣ではなく、それぞれで力を出せた条件を答える |
| その気づきは、うちの仕事でどう活きますか | 志望動機の「入社後」の部分を、具体的な業務で答える |
答えは、志望動機に書いた内容と食い違わないようにします。答えに詰まる場合は、根拠となる事実が足りていない可能性があるため、思い出せる場面を増やします。
理由の具体性は、志望動機の伝わり方を左右する場合がある
志望動機の説得力は、理由がどれだけ具体的かで変わる場合があります。取材記事から、卒業生が会社や業界を選んだ理由を自分の言葉で語っている例を紹介します。
なお、ここで紹介する2つの事例は兼部に関する取材ではありません。ツナカレメディアの取材記事の範囲では、兼部に直接関わる事例は確認できませんでした。そのため、志望理由を語るときの「具体性」の参考として、個別の証言を紹介します。
ある大学のアイスホッケー部の卒業生は、部活動を最後まで続けながら就活を行ったため、エントリーした企業が約6社に絞られていたと話しています。デベロッパーを志望した理由については、就職活動を行っている中で、自身の地元が、あるデベロッパーによって50年かけてつくられた街だと知り、街づくりという仕事に惹かれていったと紹介されています(出典: ツナカレメディア OBOGインタビュー 2026年1月22日掲載)。
また、ある大学のボウリング部の卒業生は、新卒で信用金庫を選んだ理由について、地元に近い場所で働きたいという思いがあり、地域に根ざした金融機関なら活動エリアが比較的限定され、地元に近い環境で多様な業種の企業と関われると考えたと紹介されています(出典: ツナカレメディア OBOGインタビュー 2026年8月28日掲載)。
2件は兼部の事例ではありませんが、共通するのは、「何に惹かれたのか」と「その会社や業界のどの特徴が自分の理由に合うのか」が、事実を添えて語られている点です。兼部の経験を使う場合も、経験そのものより、「経験から見えた大事にしたいこと」と「会社の具体的な特徴」を結ぶ部分を、同じくらい具体的に書くことが一つの目安になります。
提出前の確認
提出前は次の4点を確認すると、兼部が志望動機の根拠として機能しているかを点検できます。
冒頭に「なぜこの会社か」の結論があるか、兼部の経験が根拠として書かれているか、会社の特徴を確認した事実から書いているか、ガクチカと同じ文章を使い回していないか、の4点を見直してください。志望動機を含むエントリーシート全体の書き方は、ツナカレメディアのオープンESの解説も参考になります。
まとめ: 兼部は「主役」ではなく「根拠」
兼部の経験は、志望動機の主役ではなく、会社を選ぶ理由を支える根拠として使うと整理しやすくなります。共通点・対比・両立の3つの型から、自分の事実に合うものを選び、会社の特徴と結びつけてください。
- 志望動機の主役は「なぜその会社か」。兼部は根拠の1つ
- 型は「共通点」「対比」「両立」から選ぶ
- 会社の特徴は、確認した事実から書く
- 面接の深掘りに備え、兼部を始めた理由や優先順位の決め方を事実で確認しておく
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